オリンピックのシーズンですね。
己の実力をあのような大きなプレッシャーがかかる場所で
発揮できる各国の選手たちに畏敬の念すら感じます。

595『皹』

.皹

外道魔像から血の涙が流れます。
一歩も譲る気はない両者の攻防。

「ナルト。奴の能力は分かってるね!
 奴が吸い込もうとする瞬間がチャンスだ・・・。
 その時、奴自身実体化する。
 ただ単に攻撃をしても全てすり抜けるよ。」

ナルトが影分身をつくります。
それに合わせてカカシが忠告します。

「カウンターを狙う感じだな!
 陽動攻撃が基本。
 接近戦の手数でスキを作る!
 あまり大技は使うな。」

近接戦闘の基本を確認するようにガイも言います。

「分かってるばよ!!
 だから分身したんだ!!」

影分身体と螺旋丸を練る容量で白黒陰陽チャクラを練りこむナルト。

「もういける…!」

白と黒のチャクラが2:8の配分で安定する形態変化の術。
九尾と和解したこともあって、
より九尾のチャクラの性質を理解できたためでしょう。
ナルトもこの《尾獣玉》に自信があるようです。

「ビーさん!
 オレを高く持ち上げて下さい!」

カカシは高い位置から万華鏡写輪眼《神威》による遠距離攻撃を狙います。

「(直接触れる攻撃はさけた方がいいな…!)」

ガイも両手ヌンチャクによる打撃法《双襲牙》に切り替えます。
非常に小さく圧縮された尾獣玉《超みに尾獣玉》によるナルトの攻撃を皮切りに
激しい攻防が始まります。
《超ミニ尾獣玉》をすり抜けてかわすトビ。
当然、これはクローン体であることは分かっていました。
一応とどめを刺して本体でない事を確認した後、
続いて第二陣に来たナルトに照準を合わせます。
そのタイミングで上空よりガイが奇襲攻撃をかけますが、刹那で透過。
すかさず実体化すると思われたタイミングで、
ガイが二撃目の打撃を入れにかかりますが、扇によって弾きます。
トビがクナイ攻撃で間合いを取ります。
クナイを弾いて追撃にいくガイ。
ガイに隠れてナルトも突進します。
ガイの攻撃を防ぎ、ガイをやり過ごしたトビは背後をとります。
そこから扇で背後に会心の一撃を狙いますが、
背中に目があるようにヌンチャクでその攻撃を何事もないように受け止めるガイ。

「(かっけー!! ゲジマユ先生!!)」

ガイの攻防に触発されたナルトは、
九尾チャクラの腕を伸ばしそのまま宙空にいるトビを捕えにかかります。

「(よし! これだけチャクラを練り込めばいける!
  悪いが――魔像を狙う!!
  首をえぐり取れば魔像と言えども生きてはいられないでしょ!)」

ナルトとガイの攻防に隠れて、
トビの"最大の弱点"を狙いにいくカカシ。
《神威》を発動し、禍々しい外道魔像の首側を飛ばすため、
空間を歪ませます。

「甘い。」

しかしカカシの狙いに気付いたトビは、
《神威》による空間転移を阻止し、《神威》は不発。

「(どういうことだ…? まさか…)」

トビによる《神威》の強制的な無効化に何かをカカシは感じ取ったようです。
同系統の時空間系の写輪眼の術――そこにヒントを見出したのでしょうか。
あるいはトビの同じ瞳力を感じたか――。
トビは舞い上がる瓦礫の中突如その姿を消します。
自身を空間転移した後、ナルトの真下から現れ奇襲をかけるのです。

「やっぱ強ェ!
 攻撃すら当たんねェ!」

トビのチャクラを鋭敏に感じ取っていたはずのナルトですが、
扇による強力な攻撃をかわしきれなかったようです。
加勢に行きたくても舞い上がる岩が邪魔で思うように動きがとれないガイ。
カカシが雷切で岩を切り裂いて空間をつくります。

「クナイは俺が何とかする!
 ナルト! 気にせずそのまま行け!」

雷遁ののったクナイを投げつけるカカシ。
しかしトビは当然すり抜けさせ被弾しません。
そのままナルトへ飛んでいくクナイをカカシは《神威》で飛ばします。
向かってくるクナイを怖がらず、
九尾チャクラをまとった腕を伸ばしトビを攻撃。

「くそ!!」

しかしナルトの攻撃もまたすり抜けてしまうのです。

「大丈夫か!?」

また間合いをとって離れたトビに対して、
ガイがかけつけカカシ、ナルトも合わせ、攻防の中再び三者が揃います。

「ああ…。
 しかしあの攻撃でもダメとなると…」

死角をついた攻撃や威力の大きい攻撃も、
その"透過"によってすべてやり過ごされてしまいます。

「どうすりゃいいんだよ。」

ナルトもタイミング勝負じゃなくて、
もう一手詰める必要がありそうです。
完全にこの工房を乗り切ったかに見えたトビ。
しかしその仮面には皹<ひび>が入っています。
小南がトビを追い込んだように、
何かしらの攻略の糸口があるのでしょうか。