遅くなり申し訳ありません。
ここのところ夜勤があったり忙しさが続いててんてこ舞いです(@_@)
でも今回もナルトは大切なお話ですんで、
気合で書かせていただきました。

映画版予告のNARUTOも巻頭にあって読みごたえがある回でした。
記事は本編のみですが…(汗)

594『祖たる者』

1.祖たる者(1)

「よく見ておけ…。そして肌で感じろ。
 十尾復活を!!
 そして世界の終わりの始まりを!!」

ついにその外道魔像の力を解放させたトビ。
十尾を復活させ、己が野望を実現するべく
躊躇なくその禁を破ります。

「そうか! ならその魔像が十尾の素体だったってことか!」

事情が朧気ながらも理解できてきたカカシ。

「ハァ!? 何だァ?
 十尾ってば!?」

一方、初耳のナルトは首を傾げます。

「…しかし、どういうことだ!?
 五影会議で宣戦した時に言い放った通りなら…、
 十尾復活に使う九匹の尾獣チャクラを回収するための戦争でしょ!
 八尾と九尾の回収はまだ終っていない…。ハッタリか…?」

五影を前にしてトビは高らかと言い放ちました。
限月読とそのための十尾復活――
八尾、九尾を回収しなければならないことを。
その情報を考えれば、トビの言っていることはハッタリではないか――
とも思えてくるものです。
しかし、魔像が放つ只ならぬ気配に、
カカシも迂闊に攻めの一手を指せません。
欠片でもその力に変わりはない――
トビの言った言葉に思い当る節がある八尾。
自らの尾(?)であるタコ足一つ分を分身に使って、
サスケたちを出し抜いたときの残骸を、回収されていた可能性が高いのです。

「オレ達いつも韻を踏みつつドジを踏むゥ♪ イエー♪
 前にタコ足分身のチャクラを回収されてるゥ♪
 こう見えても少し慌ててるゥ♪」

と不安を煽るビートをかますビー。

「なら…尾獣の一部でもいいということか?」

十尾復活――
カカシは現在のトビの行動と言動から状況分析し
完全体ではないだろうとしても、
各尾獣の一部が含まれていれば、それも可能であると結論付けます。
そもそも九尾のチャクラの一部はミナトによって屍鬼封尽により封印されています。
となれば、当然九尾のチャクラというのは不完全であり、
全てが完璧に揃わなければ十尾復活はないという設定だったら、
もうすでにトビの負けは決まっていたようなものだったのですが、
そうは問屋が卸さないというわけです。

「ナルト…。お前も感じたようだな。
 あのツボとひょうたんの中にワシのチャクラがあったことを。」

九尾がナルトに話しかけます。
相槌を打つナルト。

「代われ、ナルト。…ワシが説明してやる。
 十尾についてもな。…お前もここで聞いてろ。」

と九尾。

「九喇嘛は十尾のこと知ってんのか?」

とナルトが訊ねると九尾は頷きます。

「ああ…。もちろんだ。」

2.祖たる者(2)

ナルトの外形をとどめつつも、九尾が表舞台に立って皆に説明を始めます。

「ナルトが九尾と入れ替わった♪
 色々と説明してくれる…
 九尾とナルトはもう腹割った♪」

八尾の外見ながらビーが表舞台に立っているこの発言と対照的です。

「尾獣の一部でもいいってんなら…、
 すでに魔像には八尾とオレのチャクラの一部が入ってる。」

九尾のチャクラも入っているということに、
さすがのカカシも驚きを隠せません。

「さっき奴が口寄せし魔像に食わせた壺とひょうたんは、
 六道のジジイが持ってた宝具だ。
 何でも封印しちまう強力な封印術を持ち、
 入れられちまえば何をしても出られねェ…。
 でだ…さっき、その壺の方には金角…
 ひょうたんには銀閣ってのが封印されて入ってた…。
 おそらく穢土転生されこの戦争に利用されたあげく、
 それらに封印されたんだろう。」

宝具・"紅葫蘆"と"琥珀の浄瓶"。
それらに封じられているという金角・銀角兄弟。
九尾の話し方から察するに、
封印されているといえど、宝具伝いに自分のチャクラを感じているのか、
姿が見えずともその二人だと断定した話し方です。
あるいはナルト伝いに、いまの忍連合軍の戦況、
金角、銀角を第一部隊が封じたことを本部より聞いていたと思われるため、
それも自然だと言えます。

「六道仙人に、金角銀角兄弟…伝説に聞く名ばかりだぞ。
 …しかしなぜそれが九尾チャクラと関係ある。」

話のスケールの大きさにたじろぎつつも、
本題を外していないガイ。

「かつて奴ら兄弟がワシに戦いを挑んできたことがあった…。
 食ってやったがな。
 だがその後…、奴らはワシの腹の中でワシの肉をむさぼり喰い、
 ワシのチャクラを吸収しおった!」

話が見えたのか、カカシが続けます。

「…つまり金角銀角は九尾のチャクラの一部を持ってたってことだね。
 そして面の男はそれを十尾復活の保険材料として奪っておいた…。
 ダルイ第一部隊から…。
 そこは本部の情報と一致する。」

本部より伝え聞いていた内容からも判断して、
トビがすべての尾獣のチャクラを有していることは確定しました。

「なるべく復活する前になんとかしたいものだな…」

とトビを見据えるカカシ。

「カカシ…、
 お前はそうやって簡単に口を開く。
 後悔だらけの生涯を送るにふさわしい男だ。

カカシの言動が癪に障ったのか、
あるいは昂ぶる気持ちゆえか、
トビはカカシに対して私情のようなものを口にします。
カカシがまわりに唯一見せたかもしれない後悔――を、
この仮面の男はまるで知っているかのような口振りです。

「……お前……、
 いったい本当に何者だ……!?」

ガイでも仮面の男の言動に何か勘付くところがあるようです。

「顔を覚えないお前に、
 それを教える意味があるのか?」

といなすようにガイの問いかけを受け流すトビ。
いずれにせよ、トビはカカシの知っている誰かである――かもしれません。

「カカシ…。お前の言うようにやるなら十尾が復活する前の今しかない。
 十尾が完全復活する時はこの世の終りを意味すると六道のジジイは言っていた。」

と九尾はカカシと口をそろえるように言います。

「そんなに十尾ってすげーのか!?
 尾が10本あるのは想像できっけど、
 いったいどんなのだ!?」

九尾をより身近に感じられるようになったナルトにとっては、
もはや尾の数だけではその脅威というものは感じないのかもしれません。
ナルトの問いかけにしばらく考えるようにしてから、九尾は答えます。

「一尾から九尾であるワシのチャクラの集合体であり…、
 チャクラの始まりであり国造りの神だ。
 天目一箇神<あめのひとつのかみ>…
 ダタラ…、デイダラボッチ…、色々と名がある。

 海を飲み、地を裂き、山を運んで、この地を作ったとされる祖そのもの…
 単純に考えても尾獣九体を足した強さだ。
 ワシ一体じゃおよびもつかん…正直な。」

九尾すら畏怖を抱くような、はるかに巨大で強力な力をもつチャクラの集合体。
かつて九つの尾獣という形で六道仙人によって分かたれる前まで、
人々はこの十尾をいろいろな名をつけて呼び、畏れ敬っていたことが窺えます。
十尾の存在は言い換えれば自然の脅威、大災害そのもの。
その頃の人々にとっては大地震であり大津波であり大噴火であり大竜巻であったような存在。
それを治めてしまったとされる六道仙人(おそらく人間)が神格化されるのも頷けます。

「だがもっともチャクラの強いオレや八尾の一部しか
 入っていないとなると、
 やってみるまでは分からねェ…。」

と勝機があると見込む九尾。
ときどき九尾の一人称であるワシがオレになるのは、
感情の高ぶりから起こるものと推測されます。

「お前らはカン違いをしている…。
 オレにとって十尾復活は完全である必要はない。」

ところが、トビは十尾そのものが目的ではないと言います。

「オレの目的はあくまで大幻術…。無限月読だ!
 この星の全ての人間を一つの幻術にはめる。
 誰でもない一つの世界
 戦いもわだかまりもない完璧な一つの世界。
 …個を捨てた単一の意識の中にこそ真理がある!
 世界にはもはや希望も未来も名のある英雄もいらないのだよ!
 十尾が不完全でも復活すれば無限月読の術を汲めるようになる…。
 そして現実は終り、あるのはただ無限に続くたった一つの終わりなき夢!!」

仮面の男の独善的な主張に、
業を煮やし、九尾と交代するナルト。

「オレには…父ちゃんがいた! 母ちゃんがいた! …エロ仙人がいた!
 ガキは英雄にあこがれるもんだ!!
 だからオレは迷わねーで突っ走れる!!
 オレはどの先代も越える火影になる!!
 それがオレの夢だ!!! バカヤロー!!!!!」

父がいて母がいて、あこがれる人がいて、教え諭してくれる人がいて、
時に叱られたり、ケンカしたり、ときに笑いあったり――
そうした人々のつながりがあることで、
現在の自分があることに感謝しながらも、
"夢"という信念の柱がある限り、ぶれることなく真っすぐに進める。
このナルトの言葉はナルトの生き様そのものです。
生きるとはそういうこと――
争いやわだかまりがなくなろうとも、
何一つ生命の輝きがなくなるような世界を
決して"平和"とは呼べません。
"平和"とはある種のテーゼ。
自分と相手の世界を互いに信じ認め合えるようなもの――

ナルトの物語の中でのキーワードでは"つながり"です。
悪い"つながり"もある。
死んでしまいたくなるほどに追い詰められてしまう"つながり"もあります。
(一般的にこういった関係を"つながり"(友人、宗教etc)とは呼びませんが。)
悪いことがあるとそればかりが見えてしまいますが、
もっと大切なことがあることに気付かなければいけない。
大切にしてくれる人や必要としてくれる人。
そういった人たちにどれだけの感謝があるのか。
それがあれば、簡単には自分や他人の命を見誤ることはできないでしょう。
だから誰でもないと言い張って、すべてのつながりを断とうとすること、
自分以外のすべての人の世界を壊そうとするトビ、
それは"悪"なのです。

「青春は終りにしたくはなくても…
 夢はいつか終りにしなきゃならないもんだ!」

ガイの言葉にカカシが続きます。

「ああ…。夢は叶えるものだ。」

夢は叶えるもの、そしてまた見つけるもの。
私たちは生きている限り大なり小なり"希望"を抱いて前へ進んでいる。
それが原動力であり、また輝きでもあります。

「夢 夢 夢 夢 いっぱい♪
 オレの夢は年増のオッパイ♪
 多くの夢が叶ってこそ見えてくる真理♪」

シリアスな重苦しい流れをすすいでくれるビーの言葉(笑)

「個は真実を見えなくさせる。
 誰でもないオレの言葉こそ、
 世界の真理から導かれた言葉…」

などと減らず口を叩くトビには、
もうぶつかってでも止めるしかありません。
九尾のチャクラをまとったナルトの螺旋丸。
それをうちはの芭蕉扇で弾くトビ。

「簡単にはいかねーみてーだな。
 やっぱりその面、割る方が先か…。」

とナルト。

「オレには決して譲れないものがある。
 魔像には触れさせん。」

トビもバカではありませんから、
ずっと考えあぐねて出した一つの正義である信念なのでしょう。
それ以外に平和が訪れることは無いと考えている――
しかしそれは間違っていることをナルトは示さなければいけません。