所用で更新が遅くなって申し訳ありません。m(_ _)m
今回は内容が多いので二部構成です。
前半はイザナミについての考察。
後半は今話の核心を追っていきたいと思います。

前半は【禁術・イザナミの特性】

587『9時になったら』

1.9時になったら(1)

「なぜ…こんな術をわざわざカブトに掛けたんだ?
 脱出できるってことは…」

真意が掴めないといった様子でイタチを見るサスケ。
イタチは答えます。

「…こいつは昔のオレに似ていた。
 全てを手に入れたつもりで、何でも成せると盲信しようとする。
 だからこそ己の失敗に怯え、
 己に失敗は無いのだと自分に嘘をつく。
 結果、それをごまかす方法として、
 他人の力を信用しなくなったのがオレだ。」

全てを悟っていたように見えたイタチも、
いま振り返って考えてみると、
己を絶対と考え、己に嘘をついて、
完璧を装っていたところがあった――ようです。
それでも当時としては、
一族の柵<しがらみ>にとらわれず、
真の平和本当に大切なモノ器の大きさ
己の考える正義の元、イタチは行動しました。
しかし、彼自身はその結果を"失敗"だと認識しているようです。

「カブトの場合はそれをごまかす方法として
 他人の力をも全て自分自身の力だと思い込んだ。
 こいつのことも分かるんだ…。
 この忍の世に翻弄された者同士、
 どうしても自分自身を許し、認めることができないことも…。
 確かにこいつのやっていることは間違っている。
 だが…こいつだけを責めるのも間違いだ。
 カブトにはオレと違い、死ぬ前に気付いてほしい…。」

カブトは自分自身を築き上げようとするあまり、
他人と自分の境界があいまいとなり、
結果、すぐ傍にある自分を認められないままでいます。
イタチはそれが理解できる――
器の大きさを勘違いしていたのは、他ならぬ自分自身だと――
自分を許し認め、他を許し認めることができて、
はじめて過ちに気付くことができる。
死ぬ前に気付き、どうかそれを背負って新しい道を見つけてほしい。
そう願ってのことでしょう。

「こんな奴の為に何で兄さんがそこまでする義理がある!?
 こいつと兄さんは違う! 兄さんは完璧だった!」

と頑なに弱さを曝け出すイタチを認めようとしないサスケ。
いつしか自然に「兄さん」と呼ぶようになっています。

「…オレはお前に別天神という瞳術まで使い、
 お前を操る形で導こうとした。
 誰よりもお前を子供扱いし、
 守るべき対象としか見ず、
 お前の力を信用していなかった。」

そう言って、一旦サスケから目を背けるイタチ。
"本当に大切なモノ"を信じていなかった――のです。

「何であれ一つとして一つで完璧なんてものは
 無いのかもしれない。
 だからこそ補うモノが引き寄せられるように生まれ…、
 側で対を成して初めて、
 少しでも良い方向へ近づけるのだと思う。
 イザナギと…イザナミの術のように。
 オレを見て、オレになかったものをお前には探してほしい。
 だから…オレを完璧だったなんて言ってくれるな。」

一つとして完璧なものはない――
だからこそ補い合って、支え合って皆存在している。
そういうつながりに気付けばこそ、
そのつながりを大切にして良い方向に進んでいってほしい。
そう。イタチがサスケに願うことは、
まるでサスケが進んでいこうとしている方向と真逆です。

「まずはありのままの自分を自分自身が認めてやることだった。
 そうしさえすれば誰にも嘘をつくことはなかった。
 お前にもオレ自身にも。
 嘘に信頼は無く、背中を預ける仲間は出来ん。
 そして…嘘は本当の自分すら見えなくさせる。」

2.9時になったら(2)

「そんなハズはない!!
 ボクは完璧になる存在だ!!
 こんなのは…ボクじゃない!!」

出口の見えない閉じ込められた意識でもがくカブト。

「いつまで大蛇丸に成り代わってる。
 このループから抜けたいなら、
 お前の失敗を見つめ直せ。」

鍵となるイタチの言葉も聞く耳持たずです。
火遁を先読みしたつもりで、水遁をくらってしまうカブト。
波に打ち付けられ、ループの合図となる肩に落ちる水滴を感じながら、
走馬灯のように過去を思い返します。

「(何が失敗だったと言うんだ!?
  このボクがやってきたどこに失敗があったと…!?
  ボクはただ…自分の存在を…誰かに…
  見てもらいたいだけだった!
  認めてもらいたいだけだった!!
  それのどこが失敗だと言うんだ!?)」

とれてしまった眼鏡を拾い掛け直すと、
そこには水面に映る自分――

「とっくに寝てる時間だったのに」

その自分の内面からでる言葉がカブトの心を抉ります。
イタチの仕業に違いない――。

「イタチめ…!」

カブトは終わりなき戦いにまだ気づけずにいるのです。


場面変わって、
どこかの山間に手負いの忍とそれを介抱する忍――

「もう9時か…。」

介抱する側の忍が漏らします。
「どうした?」と尋ねる手負いの忍び。

「イヤ…さっさとこの戦争を終わらして、
 ゆっくり寝たいと思ってな…。
 オレ達末端の忍にはもう何が何やら…。
 詳しいことはいつも分かんねーしな…。」

手当をしながら、うだつの上がらない状況を嘆くように言います。

「…まあな…。お前…この戦争が終わったらどうすんだ?」

ふと手負いの忍が尋ねます。

「とりあえず家に帰るかな。
 戦争が終わって五大国がこのまま仲間でいるなら…
 ずっと任務で会えてない弟も帰ってきてるかもしれないしな。」

と介抱側の忍。

「帰るところがある奴はうらやましいな…。」

手負いの忍の言葉を聞いて、少し考え込むようにした後、
介抱側の忍は口を開きます。

「お前も来るか…。オレと一緒に。
 オレの家は孤児院だからよ。
 それに弟がいたら傷をみてもらうといい…。」

その申し出に手負いの忍は、

「……。
 ありがとう…ウルシ。」

と言って返します。
そうこの人物こそ、ウルシ。
孤児院でカブトの兄貴分だった人物です。

「(今度こそ帰って来るといいな…カブト。)」

帰りを待ってくれている人物がいる。
――その存在に、カブトは気づくことができるでしょうか。
穢土転生を止めるべく、イタチは次の行動に移ります。