529 『金色の絆』

1.金色の絆(1)

ビーと九尾のチャクラをコントロールする修行中のナルトですが、
金角の九尾化に伴って、チャクラの異変を感じたのか、
集中を乱してしまいます。

猛攻を続ける金角。
さすがのダルイもヤバさを肌で感じるようです。

「何だ? 人柱力なのか?」

一撃をなんとか食い止めつつも、
チョウザは金角の豹変に彼は人柱力なのか、
と尤もらしい疑問を口にします。

「…連合となった今! 話しても構わんと思うから話すが!!
 まだ、うちはマダラが九尾を手懐けるずっと前に、
 天災である九尾を雲は捕えようとした!

 金角、銀角さまはその時九尾に食べられて…、
 九尾から出てきた時ああなったらしい!」

雲隠れの老兵がその経緯を語ります。
うちはマダラが手懐けるずっと前…ということは、
柱間とマダラの終末の谷での戦いのずっと前ということでしょう。
しかし柱間によって忍界大戦は終結し、
各国に尾獣が分配されパワーバランスがとられた後の話ではないかと思われます。
ミトが九尾の人柱力となった時期や忍界大戦の終結時期など
このあたりはいろいろと複雑なので、
また改めて考えることにします。

「九尾の衣だと!?
 九尾のチャクラを宿していたのは分かったが、
 人柱力でもないのに、なぜ九尾化できる!?」

本部に戦況が伝えられ、綱手が雷影に訊きます。

「二週間も九尾の中にいたのだ…。
 二人は九尾の腹の肉を食って生き永らえたいたそうだ。
 九尾のチャクラ肉を食った人間など他にはいない。
 これをまねて雲隠れでは八尾のタコ足を食った輩もいたそうだが…
 人柱力にはなれず息絶えたらしい。」

金角、銀角は雷影によれば、
九尾の腹の中で、九尾の臓物を食らって生きながらえたというのです。
咀嚼せずに丸呑みしたであろう九尾にも非があるでしょうが、
金角・銀角の生命力はたしかに並外れたものだと窺える逸話です。
しかし尾獣の肉など、その強すぎるチャクラのせいで、
普通の人間には耐えられないレベルのものです。
それを食らって平然としていられる――雷影は一つの可能性を示唆します。

「おそらくあの兄弟は特別…
 六道仙人の血縁にあるのだろう。」

ナルトやビーを動かすわけにはいかない、打つ手がないに等しい状況。

「そんな奴をどうやって押さえる?」

綱手の問いかけに、雷影はもう一つの宝具を使うことを提案します。

「一つだけ方法がある…。
 金角は力もチャクラも強大だが、
 それを封印するには奴らの最後の宝具を逆に利用すればいい…。
 …ついて来い…。」

2.金色の絆(2)

紅葫蘆になんとか封印できないか、
攻防を続けながら思案するダルイ。

「ダルイ隊長。本部から連絡です!
 "琥珀の浄瓶"が送られるようです!」

そんな折、本部からの連絡が届きます。
琥珀の浄瓶<じょうへい>。
注連縄をあしらった大きな甕<かめ>です。
以前にも八尾関連で何度か登場していましたが、
実は宝具の一種だったのです。

「“紅葫蘆”というひょうたんと違い、
 これを持っている者の呼びかけに応えただけで、
 ターゲットの声を録音し封印する。
 金銀兄弟からこいつだけは奪ってあった…。
 これをダルイに送り、金角を封印する!」

連合本部に有事のために備えられていた雲隠れ秘伝の宝具。
紅葫蘆の強化版ともいえるこの宝具は、
持ち運ぶには少し嵩張る大きさのもので、
金角、銀角もそれより携帯に便利な紅葫蘆があったため、
この甕を奪い返されても放っておいたのでしょう。

「戦況は切迫しています。
 これを運ぶには時間が――」

と進言しかけたシカクですが、
それは雷影の秘書マブイによって解決されます。

「マブイの忍術は物を光の速さで送る物質瞬送だ。
 だからこそワシの秘書になった。
 こんな事もあろうかとマブイにこの術を準備させておいたのだ。」

彼女の使う術は物質瞬送、天送の術。つまりは瞬間移動です。
おそらく時空間忍術の一種でしょうが、
口寄せのように契約はいらず、
術者の思い通りの時間と場所へ一瞬で転送できる術のようです。
ただし、術には準備が必要であるよう。
おそらく金角、銀角が現れたと報告があってから、
金角の九尾化をあらかじめ想定して、
既に雷影が手を打っておいたと見えます。

「しかし奴らの忍具だったなら対処法も分かっているハズだ。
 どう返事をさせ、封印するかだが…。」

しかし、種が割れた忍具をどう利用するかが肝となります。
それについては、シカクに妙案があるようです。
天送の術によって打ち上げられた浄瓶は、
瞬く間に移動し、雷が打ち付けるようにダルイの前に現れます。
おそらく雷遁の術の一種なのでしょう。
現れて間もなくは、電光が迸っています。
様子を窺うダルイ。しかし、紅葫蘆にチャクラを吸われ、
もはや限界寸前の体力をつなぎとめているダルイは、
金角を見失い、死角をつかれて奇襲を受けます。
その寸でのところを救出にきた黄ツチとその部隊。
シカクはシカマル、チョウジ、いのにいのいちの術を使って
彼らのもつフォーメーションを使った妙案を語りかけます。

「過去の伝説には尾ヒレヒレがついてるもんだ…。
 それに伝説を越えるから、新しい伝説が生まれる!
 あっちが九尾の力ならこっちは猪鹿蝶の絆の力だ!!
 猪鹿蝶の連携は忍術の中でも一・二を争う伝説だ!
 自信を持て!!」

そう彼らに語りかけます。
その連携とは――
ダルイの号令と同時にクナイの弾幕が降り注ぎます。
それに隠れて不意をついた形でのチョウジの肉弾戦車。
これは陽動。続いてシカマルの影真似の術が決まります。
しかし、力づくでその呪縛を振り切ろうとする金角。
影真似がはじかれる寸前のタイミングで、
いのが心転身を行い、金角の意志と摩り替わります。
そのまま浄瓶をもつダルイの問いかけに答え封印されにいきます。
甕に収まりきる寸前にいのが術を解いて、
見事金角の封印に成功します。
打つ手打つ手が次につながる、まさしくチームワークの為せる業。

「雲に二つの光ありと謳われたこのオレ達が、
 こんなヤロー共に!!」

断末魔の叫びをあげるように恨み言を遺して封印される金角。

「金貨も銀かも銅貨に比べりゃよく光るし、
 価値も高けーけどな。
 銅貨も集まりゃ一枚の金貨と同等の価値になる。
 同じ金でもアンタのはニセモノだったようスね。
 …だからオレ達が勝った!
 金メッキ…剥がす事になっちまってすみませんね。」

金<こがね>、銀<しろがね>どちらも価値は高いけど、
それより価値の劣る銅<あかがね>、鉄<くろがね>、鉛<あおがね>だって
集まればその価値は金と同等のものになる――
もしも価値が同等だったら優劣がつくことはないはずです。
しかし、こうやってあっさりと勝敗が定まるということは、
集まった銅貨を足し合わせた価値がずっと上だったか、
金貨がそのもの金にあらず、
ただ表面を金で覆った分だけの価値しかないものだったか――
ダルイは前者も後者もとしていますね。
偽金貨は確かに鍍金に使われる金の分、
銅貨一つ一つよりは価値があるでしょうが、
金貨に相当する銅貨の集合価値に比べてしまえば微々たる付加価値。
その差の大きさは一瞬の決着につながった、と。

最後に一つ。ダルイは先の攻防で紅葫蘆に封印される言霊が
「すみません」に入れ替わったはずです。
いま言った言葉で自らが携える紅葫蘆に封印されてしまうはずですが、
金角の封印に伴って幌金縄も封印されたから、
ということにしておきましょうか(^^;)