521 『大連隊、戦闘開始』

1.大連隊、戦闘開始(1)

穢土転生の術にリスクがないことに少し訝しがる様子のトビ。

「本当さ…。穢土転生の術にリスクはない…。
 イヤ…。一つだけあったかな…。」

――とカブト。

「あまりに素晴らしく強い術のため、
 術者の名が世間の隅々まで行き渡る…。
 ボクはいずれうちはマダラよりも有名な忍になる…。
 インテリなボクはそんな事望んでないんだよ…。
 狙われるだけだしね。」

つまりこの術のリスクは、
あまりに強大な術のため、使い手として知られると、
命を危険に晒す可能性があるということでしょうか。

「図に乗るなと言っている! 
 物事には全てに反動がある。
 気を抜かずいる事だ。」

一流の忍としての自負が許さなかったのか、
はたまたこれから自分の作戦の一環として、
確実なコマとして動いてもらわなければならないためか、
トビは少し感情を露にして忠告します。

「忠告ありがとう。
 この術のリスクがあるとすれば、
 君に話してしまっている事がリスクさ。」

と言って切り上げようとするカブトに、
トビは術の解除の方法についても説明するように催促します。

「穢土転生を操ってるボクを操り、
 戌・午・寅の印で“解”をして止めればいいのさ。
 たとえば君の写輪眼とかでね。
 後は穢土転生の術を封印するとかかな。」

――と、術の解除の方法を淡々と説明するカブト。
しかし、あまりの簡単さゆえか、

「………。
 それが本当だといいがな。」

トビはまだ何かあるとふんでいる様子。

「君に嘘をつく勇気はないよ。…と話はここまで…。
 ちゃんと止め方は話した…。もう行くよ。」

と早々と立ち去るカブト。
確かに嘘は話していないでしょう。
しかし、全てを話したわけではない様子です。

「(穢土転生ともう一つのあの術があるかぎり、
  ボクは無敵だ…。いずれは…、
  六道仙人の真理を、ボクが解き明かしてみせる!!)」

穢土転生の術とカブトを無敵にさせるというもう一つの術。
うちはマダラと目されるトビの前で堂々と、
取引を持ちかけることができるほど、
それらの強大な術は大きな自信へと繋がっているはずです。
そしてカブトの現時点での目的は、
忍の祖といわれる六道仙人の力の解明でしょう。
あくなき探究心とそのマッドサイエンティストチックな思考回路は、
間違いなくトビに不信感を募らせるものです。

「あいつに白ゼツの胞子は付けてあるな。」

とカブトの様子を監視していた黒ゼツにトビは言います。

「モチロンダ。」

と黒ゼツ。

「なら黒ゼツ…。お前はそろそろあっちの方の段取りをしろ。」

黒ゼツも何やら動き始める様子。

2.大連隊、戦闘開始(2)

中吉の要請にこたえて増援にあたる部隊も動きはじめます。

「……穢土転生……。
 二代目火影扉間の時より洗練されておるな…。
 これほど一度に魂を縛るとは、…大した輩よ。」

カブトの穢土転生の術にチヨバアも驚嘆します。

第五部隊のミフネは、土中からの敵大軍移動を睨み、
その縦長に構える自身の部隊の一部を、
黄ツチの第二部隊へと増援に向かわせます。
一方でその黄ツチの部隊は、
土遁・開土昇掘によって白ゼツたちを掘り起こし、戦闘を始めました。


いくつか群れをなして飛ぶ大鳥。
その一角に不自然と思われるもの。
冬の時期だけ子供を育てるためにつがいで二羽一組で飛ぶはず。
敵はそこと奇襲による攻撃がどこから来たか、見当をつけた白。
すかさず秘術・魔鏡氷晶によって反撃し、サイたちを撃墜。
起き上がった彼らの前には霧の白、再不斬の他に、
砂のパクラ、岩のガリと呼ばれる血継限界の忍たちが待ち構えます。

「君たちに何の恨みもありませんが…、
 ボクたちの意志ではどうしようもない。」

白たちが一気呵成で攻勢に転じようとしたところに、
はたけカカシらが割って入ります。

「戦う事になるのは分かってたが、
 まさかお前だとはな…カカシ。
 あの橋の上でお前らに止めをもらって、
 オレは地獄に行くはずだった。
 気がつくと白と同じ場所に居た……。おかしいとは思ったが、
 …ここはどうやら、地獄でも天国でもないらしい。」

目の前に現れたカカシに、
昔懐かしそうに、そう語る再不斬。

「ここは現実の世界…。
 もうお前達の来る場所じゃないのさ。」

カカシはそう告げます。

「ホウ……。
 大きくなったな、カカシのくの一。
 あの小僧は元気にしてるか?」

その問いかけにサクラは少々戸惑いながら頷きます。
再不斬はサクラにも気づき、彼女の成長を見、
月日がどれだけ経ったか思いを馳せたのでしょう。

「オレたちを負かしやがったんだ…。
 今頃はでかくなりやがってるだろ? 名前もな。」

再び問いかける再不斬に、カカシも答えます。

「ああ…。あの橋はナルト大橋って名が付いたし…、
 今じゃ里の皆に英雄・奇跡の少年なんて呼ばれてるよ。」

その話を聞いて微笑む白。
人柱力という苦境下にあって、
仲間を大切にし、自分の意志を貫こうと前向きに頑張るナルトを見、
白は同じような境遇にあるナルトに共感していました。

「お前らのおかげでナルトは己の忍道を見つけることができた。
 そしてそれをお前らの墓の前で誓ったんだ。
 あの時からブレない立派な忍に成長した。」

とカカシから聞いて、

「なら…彼はもっと強くなる。」

白は期待めいたものが確信に変わるような、
そんな喜びを表現するように言います。

しかし、いつまでもそんな昔話に花を咲かせるような状況が続きはしません。
カブトはアンコから吸い上げた大蛇丸の力も相俟って、
より穢土転生の術を集中させます。

「カ…カシ…。
 オレ…たち……を…………止め……」

強力な邪念が取り巻くように、
意識が消失し、狂戦士へと変化していく再不斬。
かつては敵対ししかしなぜか親しみも感じる敗れた男に向けて、
悲痛な声にもならない声で助けを求めます。