■
1.九尾チャクラ、開放(1)
あの日、あの時、かけてくれた言葉に答えるように、
ナルトは心の中でクシナに語りかけます。
「(母ちゃん……。これからはラーメンばっかじゃなくて、
野菜もちゃんと食うってばよ…。
風呂は好きだから安心してくれ…。温泉にもよく行ってる。
それにいつもいっぱい寝てるしよ…。
つーか寝すぎぐらいだってばよ!
友達に関しちゃいい奴らがいっぱいできたんだ!
母ちゃんにも会わせてやりたかったなぁ…。
……ただ一人だけ、うまくいかねー奴がいたんだけどよ…!
……勉強の事は、まあ…母ちゃんの予想通りだ…。
…もちろん落ち込んではねーってばよ!
アカデミー次代は先生や先輩と色々あったけど…、
今では皆尊敬してる。
忍の三禁は自来也先生に教えてもらった…。
確かに母ちゃんの言う通りの人だった…。
……けど…オレの忍としての生き方も教えてくれた!
偉大な忍だってばよ!!
……オレは木ノ葉の忍者、うずまきナルトだ。
夢は火影の名を受けつぐ事!
そんで先代のどの火影をも超えてやる事…!!
そんで父ちゃんよりかっけー男になる!!!
そんで母ちゃんより強ェー忍になる!!!)」
アカデミーの日々。友達。先輩。先生。
自来也との日々。自分の夢…
それらを心の中で伝え、
ナルトはようやく精神集中を解きます。
心配そうなヤマトをよそに、
うまくいったことを喜ぶビー。
「だから何があったか話せと言っている!!!
アレコレソレでは分かりません!!
わざとだ!! 君達はわざとやっている!!!
それだけは分かるぞオオ――!!!」
とまぁ、勝手に人柱力どうしでしか分からない話を進めていく二人に、
ナルトの精神世界の様子を窺い知りようのなかったヤマトは、
相当長い時間やきもきしながら待ったことでしょうから、
半ばしびれを切らしたような感じです。
「なんだとォ――!!
ナルトがそんな大変な修行をォォォ!?
青春の中でもがく若者を放ってはおけない!!
ナルトのところへ案内しろ!!」
なにやら真実の滝での修行をモトイから伝え聞いたらしいガイ。
「この人ちょっと…アレなんで…すみません…。」
ガイのいつものハイテンションっぷりについていけそうにないモトイ。
代わりに謝る同僚。
2.九尾チャクラ、開放(2)
場面はまたナルトたちに戻ります。
「九尾のチャクラはオレの中の別の場所にちゃんと取ってある。
いつも使ってるって訳じゃねェ…。」
そう言うとナルトは精神世界で、
四方を鳥居に、その中心を球状の浮遊体がある場所にいきます。
ナルトが手を翳すと、吸い寄せられるようにその浮遊体はナルトへ。
これが九尾のチャクラのようです。
「これが使った時の感じだってばよ!!」
するとナルトのまわりを凄まじいエネルギーが覆い、
まるで揺らめく火のように、ナルトの身体を包み込みます。
「すごい…生命力に満ちてる…。
ボクの木遁が影響を受けるなんて…。」
何かの目的でおかれた角ばったヤマトの木遁の像が、
葉や枝を携え、瞬く間に成長していきます。
――と、その時ナルトは何者かの気配を感じとった様子。
ビーですら気が付かなかった、
完全に鮫肌と同調している鬼鮫の存在に気づいたのです。
危険を察知した鬼鮫は正体を現します。
「感知タイプのどれにも当てはまらない…。
それが九尾のコントロールを成した人柱力の力ですか……。」
ビーらになぜ自分が生きているのか、
白ゼツの特別な分身の術という種明かしをした後、
まるでフナムシのように逃げ行く鬼鮫。
しかし、ナルトがそれを逃しません。
まるで瞬間移動したかのように、
瞬身の術を大きく超えた速さで鬼鮫の攻撃します。
「瞬身の術なのか…?
…いきなり先攻♪ これじゃまるで……黄色い閃光!♪」
とビーに言わせしめるほど。
しかしまだこの状態での戦闘に慣れてないためか、
勢いが良すぎて、姿勢の制御や力の制御ができてないナルトは、
勢い余って足を地面に深くとられます。
その隙を縫って逃げる鬼鮫。
「任せろ追跡♪ すぐに追撃♪」
ナルトに向かったヤマト。
ビーが鬼鮫の後を追います。
一方真実の滝に来たガイ。
ガイもやってみたらどうか、と言われて、
ナルトの応援が先決だ、といいます。
「…本当は真実を知るのが怖いだけなんじゃないですか…。
ひょっとして…。」
――なんて言われたら、ガイもやるしかありません。
自慢の青春パワー物怖じ分半ばガス欠気味(?)で、真実の滝に臨みます。
「正直…青春青春って…言ってる場合でもないだろ…。
老けたオッサンが無理をすると、体を壊すぞ。」
真実の滝の向こうに見える自分。
何やら忠言がやたらとまともです(笑)
「リーの手前、青春でいかなきゃいけないのは分かるが…、
誰もそんなお前の無理矢理な青春を望んでなんかいないんじゃないか?」
ここは自分の中で普段気づかない思いが表れる場所でもある。
ガイの中でも、潜在的にこういった思いがあるのでしょう。
「姿を見せろ!! 言いたい事を言わせておけば!!」
滝の向こうに朧な影でしか見えないもう一人の自分に、ガイは憤ガイ。
「いいだろう…。真実のお前をとくと知るが…」
「(こ…これが、オレの本当の姿…!?? 珍虫!!?)」
と非常にショックを受けるガイ。
「(…こいつは確か…珍獣!?)」
一方鬼鮫の方は即座にガイのことを思い出します。
「青春を忘れたオレ!
お前の根性をたたき直してやる!!」
すっかり真実の自分だと思い込んだガイ。
問答無用の一撃。当身式の肘鉄、木ノ葉壊岩升が炸裂します。
炸裂したあとに、まわりのみんなの言葉に気づくガイ…