468 『八尾と九尾』

1.八尾と九尾(1)

「第四次世界大戦じゃと…正気か!?」

土影をはじめ驚きを隠せない各国の面々。
自国(自里)の権利を主張はするが、他国とは争い合おうという気は
雷影含めてどの里の影にもあるようには見えません。
だからこそ今まで均衡が保たれてきたのでしょう。
そこにいきなりその均衡を揺るがしかねないトビが現れたのです。

「冗談でこんな事を言い出すほどバカでもない。
 今度は戦場で会おう。」

そう言って空間の渦に消えていくトビ。
困り果てる面々ですが、風影は尾獣7体の力に対抗するために
忍連合軍をつくらなければならない――と提案します。

「弟は無事だったようだが……これ以上“暁”に
 だらだらと振り回される訳にはいかん!
 忍連合軍をつくり一気にケリをつける!」

雷影も乗り気と言った様子です。そして木ノ葉についてですが、

「ダンゾウは黒い噂が絶えん!
 今回の会談の件でワシらの信用を失った!
 それにこれが木ノ葉の忍達に知られれば、
 木ノ葉でのダンゾウの立場も危うい…いずれ失脚だ!」

火影としてダンゾウは失脚する――
木ノ葉の忍達も連合軍として戦力にするなら、
誰に伝えれば良いのかという問題が浮上します。
そこで風影は信用できる木ノ葉の忍、はたけカカシに伝える旨を提案します。
土影もカカシを白い牙の息子として認知しているようです。

「…いいだろう。ダンゾウよりは信用できそうだ。」

会談に来る前、頭を下げに来たナルトに付き添ってきたカカシの言葉が脳裏を掠めます。
ナルトの嘆願を受け入れるわけにはいかないが、
その思いを支えるために、ナルトという一介の忍に付き添ってきたその姿勢――
カカシの度量と人間性を本物と幾ばくかは認めざるを得ないと感じたのでしょう。
雷影も風影の提案を承諾します。

「雷影さますぐにでもキラービーを探す手配をつけましょう!
 “暁”が八尾と九尾を狙っているなら、
 奴らもまたビーを執拗に追ってるはずです。」

とシーの提案。雷影も頷きます。
ダルイもサムイ小隊へこの事を伝えるべく動くつもりのようです。

「マダラの“月の眼計画”とやらを阻止するためには、
 絶対に八尾と九尾を渡してはダメです。」

と水影。十尾の復活など断固としてあってはならない、長十郎も発言します。

「ワシら忍連合軍側も八尾と九尾の尾獣を戦力として
 計算した方がいいのではないか?」

七体の尾獣を集めた力は想像がつかない――
ならばこちら側も尾獣という莫大な力を使わずにおくというのは
大きなハンデとなってしまう。土影の提案です。

「それはダメだ。これは二人を守る戦争でもある。」

風影はそれに対して異を唱えます。

「マダラが集めた七体の尾獣で戦争を仕掛ける理由……
 おそらく残っている今のマダラや残りの“暁”メンバーだけでは
 八尾と九尾を捕える事が難しいからだ…。
 できたとしてもリスクが大きすぎると考えた。
 ……それに戦争で二人を誘き出すためかもしれない。」

暁側の事情をいくらか知っている我々読者が見ると、
暁メンバーや弱体しているとはいえマダラが尾獣を捕えられない、
ということはないと考えることができるでしょう。
そしてリスクもそれほどではない、
というよりもリスクを感じさせることなく、
トビが三尾を捕えたようにこなしてしまう――ように思えます。
そもそも暁の人柱力狩りが隠密に行われていたのは、
各国を騒がせないためだったと考えられます。
ところがもう五影に暁の計画を伝えた以上、そんな事は気にする必要はないはずです。
逆に我愛羅が考えるとおり人柱力は各国に匿われてしまうことになる。
暁としては動きにくくなるはずなのですが、
逆にその方がトビにとって都合が良い何らかの理由があるはずです。
だからこそわざわざ表舞台に出て動き始めたわけです。
つまり我愛羅はトビの思うツボにはまっている可能性が高いでしょう。

「ワシも風影の意に同意だ!
 もしもの事を考えれば敵の前に八尾と九尾を
 おいそれと出すわけにはいかん!」

雷影も風影の意見に賛成のようです。

「そもそも八尾であるワシの弟は作戦などという言葉には縁遠い奴だ!
 何をしでかすか分からん…。逆に戦場が混乱するかもしれんしな!」

実力は高いものを秘めているものの、
指令系統を混乱させてしまう、あるいは従わない
という性質をビーが持っていることなのでしょう。
ナルトも同じようなもの、我愛羅、テマリ、カンクロウも認めるところです。
さて、そんなこんなでまとまりかけたところで長十郎から鬼鮫についてのリークがあります。

「あ…“暁”にはまだボクと同じ忍刀七人衆干柿鬼鮫がいます……。
 その人は人柱力並のチャクラ量と……
 七人衆の刀の中でも最悪な“鮫肌”を持っていて…
 刀と融合すると人間でありながら人柱力に近い力を発揮する
 尾を持たない尾獣だって…先輩達からそう聞きました。」

この発言から長十郎も忍刀七人衆の一人であることが分かります。
つまり、ヒラメカレイもその七人衆が持つ刀の一つというわけです。
そして鬼鮫についてですが、鮫肌は七つの刀のうち最悪――性質が悪いこと、
そして鬼鮫自身が莫大なチャクラ量をもつというのはガイとの戦いで垣間見ましたが、
刀と融合してしまう能力まであるということです。

「もし八尾と九尾を拘束してワシら忍連合軍が二人を守ったところで…、
 その連合軍が全滅しては意味がない。
 だったらじゃぜ…はなから二人を参戦させ忍連合軍と協力戦を
 仕掛けた方が有利だと思うがの。」

あくまで刃には刃を尾獣には尾獣をという姿勢の土影ですが、
そうする必要はない、とここでミフネの提案が入ります。

「今ここに世界初の忍連合軍が出来つつある。
 その力もまた未知数…。
 マダラが七体の尾獣の力を使用するにもリスクがあるハズだ。
 でなければここへ来てわざわざ交渉を持ちかけたりはしない。
 向こうにも不利な条件があるのでござろう。
 それに…この戦争我々侍も参戦する!
 土影殿…これでもまだ心配事がおありか?」

中立国であり忍とは関係の無い侍の参戦。
――それはトビが巻き起こそうとしている尾獣を率いた戦争が、
単に忍世界に留まることはない、
つまり全世界を巻き込みかねない事態に発展する可能性があるからでしょう。
それにもちろん侍とはいえ無関心ではいられないわけがない。
何たって全人類が幻に支配されてしまうわけですからね。
土影もしぶしぶといった感じでその提案を呑みます。

2.八尾と九尾(2)

無事だった水月と重吾。先をいったサスケと香燐を追おうと、
上階へと行こうとしますが、水月の妙案があるようです。
一方、何とかゼツの胞子の術を振り払った黒ツチも描かれています。

さて八尾キラービーはというと、

「忍びぃぃ〜〜〜♪
 忍んでぇぇぇ〜〜〜忍び泣きいぃぃ〜〜〜〜〜♪」

とサブちゃん先生に演歌を習っている(?)様子。

「ただ歌うんじゃない。演歌とは情を込めた魂だからよっ!」

丁髷に太い眉。円らな瞳ですが頑固一徹の雰囲気をもつサブちゃん先生ですが、
その演歌に想いを込めるために男泣き。
ビーにそれができるわけがなく、

「情念がないのよう、情念がよっ!!
 歌をなめてないかい? …って事になっちゃわないか?
 それじゃあよっ!」

ウィィ〜〜と天高く指を突き上げる姿勢、
サブちゃん先生は演歌を侮辱しているのかとご立腹。
流石のビーも冷や汗が流れます。

「演歌とは読んで字のごとく情念で歌の世界を
 演じる事が大切だからよっ!」

とご高説中のサブちゃん先生ですが愛犬(?)のポン太が何かを嗅ぎつけます。
そこには“暁”鬼鮫の姿が。

「私用で少々時間がかかるがしょうがない。すぐに消滅させようか。」

と相変わらずの韻を無駄にフんだ語り口調で鬼鮫を睨みます。

「ずいぶんと探しましたよ八尾。
 私の大刀“鮫肌”は強いチャクラが大好きでしてね。
 おいしそうなチャクラのニオイをやっと嗅ぎ付けたみたいで…。
 悪いですがこの“鮫肌”のエサになってもらいますよ。
 なに殺しゃしませんがね。」

どうやら鬼鮫と八尾ビーの戦いが始まるようです。
一方でナルトにサクラたちが接触。その思いを伝えようとしています。