447 『信じる』

インフルエンザが流行っていますね…。
インフルエンザがパンデミック(世界的大流行)を起こすのではなくて、
ナルトであったなら平和でいいのですが――

さてその平和の在り方について――447話『信じる』では核心へと近づきます。

1.信じる(1)

弥彦が斃れたのを見て、今度は長門をも殺害しようと周りの忍に命を下す半蔵。
弥彦の想いを宿らせ滾らせた輪廻眼は飛び交うクナイをことごとく弾き飛ばします。
攻防の末、長門は半蔵の手から小南を連れ戻すことに成功しますが、
長門の虚を突いて半蔵は地面から無数の起爆札を呼び寄せます。
この起爆札が意志を持ったように長門の足に絡みつき、爆破。

「やるな小僧! ワシの火遁をくらいながら逃げきるとは!」

この術は半蔵の火遁の術の一つのようでしたが、
長門は両足を燃やされ立っているのがやっとの状態でも、
この恐るべき術に耐え、小南の手を後ろに縛っていた紐を外します。

「お前…ただのガキじゃないな。……その眼。」

半蔵が長門の輪廻眼に気づくや否や、
今度は木ノ葉の暗部たちが長門を仕留めようと襲い掛かります。
怒涛のように押しかける人数にもはや…と思われたとき、

長門、それは使っちゃダメ!」

長門の『口寄せ・外道魔像』が発動。
召喚された魔像は幻龍九封尽の術の原型と思われるこの術は、
長門が魔像により黒い棒に貫かれ、代償に生命力を削って、
魔像が口から召喚した幻龍によって対象の魂のようなものを抜き去り、
強制的に死亡させる術。

「お前が影のリーダーだったようだな!
 輪廻眼を持っていようとは驚かされたわ。」

げっそりと別人のように痩せ衰えた長門は、
最後の力を振り絞るようにして半蔵へ幻龍を差し向けます。
しかし、瞬身の術で逃れてしまう半蔵。
…そしてもちろんダンゾウの姿もそこにはいません。

「弥彦は死んだ…。
 それからオレは弥彦に代わり組織のリーダーとなった。」

この日を境に仲間が何人も何人も死んでいく現実。
リーダーの長門には耐え難い苦痛を与え続けたでしょう。
やがて長門はこの苦しい“痛み”の末にある結論に辿りつきます。

「平和ボケしたお前達火の国の民…。
 木ノ葉隠れに依頼する小さな依頼金が戦争の資金になる。
 火の国の民は少なからず戦争に加担した事実を知りつつ、
 偽善の平和を口にする。」

火の国の民――、それは蹂躙することで築き上げた平たい土砂に
自分勝手に居座り続け、その心地よさを独り占めしているだけの存在。

「お前達大国の平和はオレ達小国の犠牲の上に危うく成り立っているだけだ。
 お前たちの平和が我々への暴力なのだ。」

長門にとって争いばかりを生む不平等なこの平和は我慢ならない。
だからこそ、弥彦の遺志を――戦いの続く世界を終わらせる神へとなろうと――。

2.信じる(2)

「人は生きているだけで気付かぬ内に他人を傷つけている。
 人が存在し続けるかぎり、同時に憎しみが存在する。
 この呪われた世界に本当の平和など存在しない。
 自来也先生の言っていた事は全て虚構でしかない。」

傷つくばかりであった長門
いつしか長門は人の道を踏み外してでも、
“真の平和”を築くことをよしとするまでになってしまったのです。
それが長門の全てであり、そして長門の生きるそれに従って生きて死にたいと思う理想
でもそれは痩せ細り、醜くなった様をあらわすように長門の生命はくすんだ輝きを放っています。
くすんだ輝きを放つものが映し出すもの――それは当然ぼやけてくすんだ像です。
生命は親から子へ、子から孫へ――と連綿と続く“つながり”を築くべき存在。*1
そしてその“つながり”があるからこそ、生命は、人は輝いて、
その進むべき道を自分の放つ光で照らしながら一歩一歩着実に進んでいけるのです。
様々な人が、様々に輝いています。
その光はあるときは眩しく煩わしいものとなり襲い来るでしょう。
そのせいで道を見失うこともあるはずです。
だけど見えなくてもそこに道はあると信じて、
あるいはそこに道があると教えてくれる“つながり”のおかげで一歩を踏み出していける。
――そういうものだと思います。
しかしその“つながり”を無視して、“平和”という肩書きのもと、
大国がかつて自分たちを蹂躙したように、
蹂躙することで心地よい“平和”という居場所をつくること。
それは輝いている光をことごとく遮蔽するくすんだ物体そのものであり、
それがつくりだせるのはせいぜい影という闇でしかないのが道理でしょう。

「確かにそうかもしんねェ…。
 …オレもアンタの言ってた通り、そう思う。」

何もかもを奪われていった長門の心を覆う闇を確かに感じ取るナルト。

「アンタ達の事は理解した。
 それでもやっぱりお前らは許せねェ…。やっぱり憎い。」

沸々と煮えたぎる想いはある。でも、

「エロ仙人はオレの事を信じて託してくれた…。
 ならオレは…エロ仙人の信じた事を信じてみる。
 それがオレの答だ。」

信じること――。
結局は憎しみの連鎖の一環になってしまっている長門の望む平和。
それを乗り越えるために、ナルトはド根性――“諦めない”気持ちを大事にします。

「だから…お前たちは殺さねェ。」

ナルトは長門や小南をも信じることで“つながり”としたのです。
まだ見ぬ“人が本当の意味で理解しあえる時代”という平和への答。
そこに続く道を一歩一歩進んでいくために。

3.核へ

色々なキーワードが Naruto-ナルト- という物語には出てきました。
本当に大切なモノ』というのもありましたね。
そして『つながり』、『信じること』――
Naruto-ナルト- という物語の核。
そこに迫るには、これらの文字通り鍵となる言葉が必要なはずです。
それは何か、考えてみるのもいいかもしれません。

*1:【忍の生き様、死に様】も参考にしてください。