主人公サイドがペインに勝つことを
確率の問題で考えてみましょう。
今回一般式を導いて、次回具体的な考察をする
2部構成で話を進めていきたいと思います。

1.ペインに勝てる確率(1)

さて暁のリーダーであるペインは、倒されても蘇り、
神羅天征という驚異的な術まで使いこなす強敵です。
その不死身さは飛段と、強さはトビとも並ぶものでしょう。
そんな無敵なキャラであるペインも、
自来也やナルトらにその六道のうち何体かを潰されているのですが、
無敵たる所以は、六道ペインは死体より造られたもので、
その補充が利く限りにおいて、何体倒されようが再び六道として蘇ってくるというわけです。
この状況は次の状況と等価であるとして考えることにしましょう。




上のように2つの○を考えます。
ペインに挑む者とペインとの数回にわたる攻防の勝敗をこの○に色をつけることで表します。
まずこの白丸が2つの状態を【状態a】とします。

\longrightarrow

次にペインに挑む者がペインのうちある1回の攻防で数体でも倒せたなら(一体でも可)
青丸を1個つけることにします。この状態を【状態b】とします。

\longrightarrow

さらに数回の攻防でペインを全て倒せたなら青丸をもう1個、計2個つけることにします。
つまりペインに勝つこととは、青丸が2つつくことになります。

\longrightarrow
\longrightarrow

同様にしてペインがペインに挑む者を倒した場合は赤丸で表すことにしますが、
ペインのようにいくつもの身体がないので負けたら死亡ということで、
一気に赤丸が2つつくことにしましょう。

\longrightarrow
\longrightarrow

ここで1回の攻防でペインが倒せない場合は2回目の攻防でも【状態a】のまま、
また1つ青丸がついていても(=ペイン数体を倒していても)、
次の攻防でペインを倒しきれなかった場合は【状態b】のままであるとして、

\longrightarrow

ペイン六道の蘇生が起こったり、撤退するなどして勝負がつかないなどの場合は、
青丸は消えて【状態b】から再び【状態a】に戻る形で表します。




さて、青丸をつけることができるのはペインに挑む者の能力次第によりますが、その確率をP_sとおき、
しかも完全にペインを倒せるには、残りのペインを倒すわけですが、
【状態a】でペインを倒すのと【状態b】でペインを倒すのとでは違いが生じるので、
そこから残り数体のペインを倒す確率は{\lambda}_s ({\lambda}_s \gt 0)を用いて、{\lambda}_s P_sと表すことにします。
逆に全て倒せずその間に倒されていたペインが復活し6体に戻る確率をP_qとします。
またペインが6体のとき赤丸をつける確率をP_p
何体か失っている状態で赤丸になる確率を{\lambda}_p ({\lambda}_s \gt 0)を用いて、{\lambda}_p P_pと表すことにします。
ここで【状態a】【状態b】からそれぞれ状態変化するときの確率は一定であるということにします。以上から、
【状態a】→【状態a】となる確率は1-P_s-P_p
【状態b】→【状態b】となる確率は1-P_q -({\lambda}_s P_s + {\lambda}_p P_p)
ここまでの関係を図に表すと次の様になります。



2.ペインに勝てる確率(2)

このような調子でn回の攻防が行われるとします。
実際にn回目の攻防でペインに完全に勝つ確率を計算してみましょう。
n回目の攻防で【状態a】にある確率をa_n、【状態b】にある確率をb_nとすると
ペインに完全に勝つということはn-1回目で【状態b】にあって、
確率{\lambda}_sP_sで青丸を2つつけることと同じです。
つまりn回の攻防で完全に勝つ確率は


{\lambda}_sP_sb_{n-1}

ということになります。ここでn回目に【状態b】である確率b_nを求めてみましょう。
ここでn回目に【状態b】であるというのは、

  • n-1回目に【状態b】で確率1-P_q-{\lambda}_sP_s-{\lambda}_pP_pでペインの蘇生が起こらず決着もつかない
  • n-1回目に【状態a】で確率P_sでペインを数体倒した

ということです。同様にしてn回目に【状態a】である確率a_n

  • n-1回目に【状態a】で確率1-P_s-P_pでペインを倒せない
  • n-1回目に【状態b】で確率P_qでペインの蘇生が起こった

ということになりますから、次のような漸化式が成立します。


\begin{eqnarray} &a_n&=(1-P_s-P_P)a_{n-1}+P_q b_{n-1} \\ &b_n&=P_s a_{n-1} +(1-P_q-{\lambda}_sP_s-{\lambda}_pP_p)b_{n-1} \end{array}

(1)
これはそのまま連立方程式で解くのは難しいので、行列に直して計算しましょう。

\begin{pmatrix} a_n \\ b_n \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} 1-P_s-P_p & P_q \\P_s & 1-P_q-{\lambda}_sP_s-{\lambda}_pP_p \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a_{n-1} \\ b_{n-1} \end{pmatrix}

ここで、

A=\begin{pmatrix} 1-P_s-P_p & P_q \\P_s & 1-P_q-{\lambda}_sP_s-{\lambda}_pP_p \end{pmatrix}

とおくと、はじめの状態(=0回目の攻防)では【状態a】に他ならなく、a_0=1b_0=0ですから、

\begin{pmatrix} a_n \\ b_n \end{pmatrix}=A^{n} \begin{pmatrix} a_0 \\ b_0 \end{pmatrix}=A^{n} \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}

(2)
ここでA^{n}を求めるために

A^{n+1}-xA^n=y(A^n-xA^{n-1})

となるようなx,yを考えます。このようなx,y

t^2- \big{ (1-P_s-P_p)+(1-P_q-{\lambda}_sP_s-{\lambda}_pP_p) \big}t \\ \hspace{100}+(1-P_s-P_p)(1-P_q-{\lambda}_sP_s-{\lambda}_pP_p)-P_sP_q=0

の2解であり、その2解を改めて、

t={\alpha},{\beta}(\alpha \lt \beta)

とし、

D=\big{ (1-P_s-P_p)+(1-P_q-{\lambda}_sP_s-{\lambda}_pP_p) \big}^2 \\ \hspace{100}-4\big{(1-P_s-P_p)(1-P_q-{\lambda}_sP_s-{\lambda}_pP_p)-P_sP_q \big}

(3)
とおくと、

\begin{eqnarray} &{\alpha}&=\frac{(1-P_s-P_p)+(1-P_q-{\lambda}_sP_s-{\lambda}_pP_p)-\sqrt{D}}{2}  \\ &{\beta}&=\frac{(1-P_s-P_p)+(1-P_q-{\lambda}_sP_s-{\lambda}_pP_p)+\sqrt{D}}{2} \end{eqnarray}

(4)
となります。つまり、

A^{n+1}-{\alpha}A^n={\beta}(A^n-{\alpha}A^{n-1})=\cdots={\beta}^{n}(A-{\alpha}E)
A^{n+1}-{\beta}A^n={\alpha}(A^n-{\beta}A^{n-1})=\cdots={\alpha}^{n}(A-{\beta}E)

となります。ここでE単位行列を表しています。ですから、

({\beta}-{\alpha})A^n=({\beta}^n-{\alpha}^n)A-{\alpha}{\beta}({\beta}^{n-1}-{\alpha}^{n-1})E

ここで、

{\beta}-{\alpha}=\sqrt{D}

ですので、(2)式で必要なA^{n}

A^{n}=\frac{({\beta}^{n}-{\alpha}^{n})}{\sqrt{D}}A-\frac{{\alpha}{\beta}({\beta}^{n-1}-{\alpha}^{n-1})}{\sqrt{D}}E

(5)
と書けます。したがって、

A^{n}=\frac{{\beta}^{n}-{\alpha}^{n}}{\sqrt{D}}\begin{pmatrix} 1-P_s-P_p & P_q \\P_s & 1-P_q-{\lambda}_sP_s-{\lambda}_pP_p \end{pmatrix} \\ \hspace{250}-\frac{{\alpha}{\beta}({\beta}^{n-1}-{\alpha}^{n-1})}{\sqrt{D}}\begin{pmatrix} 1&0 \\ 0&1 \end{pmatrix}

となりますが、ここで(2)式について実は

\begin{eqnarray} \begin{pmatrix} a_n \\ b_n \end{pmatrix}&=&A^{n} \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} &=& \begin{pmatrix} r_{1,1}&r_{1,2} \\ r_{2,1}&r_{2,2} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} r_{1,1} \\ r_{2,1} \end{pmatrix}\end{eqnarray}

となるのでb_nA^{n}の2行1列目(2,1)成分と等しくなります。
さらに単位行列はこの(2,1)成分が0なので、

b_n=\frac{{\beta}^{n}-{\alpha}^{n}}{\sqrt{D}}P_s

したがってn回目の攻防でペインに勝つ確率

{\lambda}_sP_sb_{n-1}=\frac{{\beta}^{n-1}-{\alpha}^{n-1}}{\sqrt{D}}{\lambda}_s{P_s}^2

が得られました。