410 『雲雷峡の闘い』

扉絵は師弟のつながりを描いたもの。右から順に、
猿飛(三代目)⇒自来也波風ミナト(四代目)⇒カカシ⇒ナルト
師の想いや生き様を託された弟子、今度は自分の想いや生き様を紡ぎゆく。
そんな様子を描いているのでしょうか?

1.雲雷峡の戦い

「こいつはオレが捕まえる。
 水月は右。重吾は左。香燐はオレの後ろにつけ。」

とサスケは冷静に仲間に命令しながらも、
射掛けるような眼光で八尾を見据えます。
一方で金髪で白い額宛に首巻きをし、腕組みをしながら余裕綽々と構える八尾の人柱力。

「ん――…、そうだな。
 話の最中、途中、大忠告だ。ばかやろうこのやろう!」

何か話そうとして、急に突進してきた水月にやたらと韻をふんで罵声を浴びせる八尾。
振り下ろされた首斬り包丁の一撃は巨大な衝撃となり、
地面を抉り、粉塵を撒き散らします。

「人柱力は殺したらダメだって“暁”の奴らが言ってただろ水月。」

“暁”の奴ら――という第三者的な言い方は、
暁の衣を身にまといながらも、暁には従属していない“鷹”のスタイルを表しています。
なんだか抑揚のない調子で心配する重吾ですが、
香燐によればチャクラは感じ取れているので大丈夫な様。陽動でした。

「オレ様につっこんでいいのはオレだけだ♪
 すっこんでろばかやろう パンチぶっこむぜ ばかやろう♪」

しかしその凄まじい衝撃に平然としている八尾。
水月の第一太刀とその衝撃を見切って、続く太刀を白羽取りしたようです。
首斬り包丁が弾かれたのを見て、重吾が前に出ます。
しかし呪印の力を借りた重吾でさえ敵わないようです。
地面に刺さった首斬り包丁によりかかりながらヒップホップの様に歌う八尾。

「八尾がサビのキラービーだぜ オレ様が! ア! イエー!
 戦いを始めちまって恥かくぜ♪
 はじける前にづっ…
 ……かんだ…」

目の前の戦いより、自分の唄の方に関心がいってる八尾。
水月や重吾を赤子の手をひねるように扱います。
唖然とする一同。

「オレがいこう。」

今度はサスケが前に出ます。

2.仙術修行

さて、妙木山で修行を始めたナルトですが、
自然と一体となる修行において、ガマ吉の「死ぬ」という喩えは行き過ぎの様でした。

自然エネルギーを己に取り込むというのは、
 それを感じ取り己に吸い寄せることができるようになるということじゃ。
 さらに自然と一体になることで、
 自然エネルギーの身体への出入りを自由にコントロールできるようにもなる。」

自然エネルギーを取り込み、自在に扱うことができるようになること。
そしてそのためには“動かない”という修行をナルトは命じられました。

自然エネルギーは動物としての流れを止め、
 自然の流れと調和した時に初めて感じることができる。」

身体を動かす厳しい修行をしてきたナルトは動かないことが簡単だと考えています。
しかし、実際私たち“動物”において全く動かないことは至難の技です。
私たちは“動かすな”と脳が指令をだすと筋肉を硬直させ動かないようにしますが、
脳からの指令にはノイズ、すなわち他の組織への伝令なども含まれ、細部まで的確には伝わりません。
例えば「面舵いっぱーい!」という指令に関して、
いっぱい舵をきればいいのは分かるけど、正確に何回転、どの量だけ、
どのタイミングで、きればいいのかは運転手の判断に任されるのと一緒です。
その結果振動するように微細な動きを繰り返してしまいます。
その他にも意志とは関係せずに動いている組織や臓器などもありますから、
意識を保ちながら全く動かないのは無理にも近い技と言えるでしょう。

「あんまり時間がかけらんねーのは知ってんだろ!
 なんかいい方法はねーのか?」

時間はかけられないというナルトに、
フカサクは妙木山秘伝、蝦蟇油の滝を紹介します。
自然エネルギーを引き込む力があるこの蝦蟇油を手に塗りこみ、
“何か”を肌で感じることができるようになったナルトは意気揚々とします。
しかし、自然エネルギーのコントロールが未熟であるナルトは、
徐々に蝦蟇油の効力でカエル化していってしまいます。
そこでフカサクが取り出したのは笏に似たはたき棒。
これによって取り込まれすぎてバランスを失った分の自然エネルギーを取り除くことができるようです。

「全てはバランスじゃ。
 精神エネルギーと身体エネルギーと自然エネルギーのこの三つ。
 この三つをバランスよく練りこまなきゃ仙術チャクラはできん!!」

自然エネルギーが少なすぎても仙術チャクラはできず、
かといって多すぎれば自然エネルギーとおそらくは蝦蟇油の作用で蛙になってしまうようです。
多少ならばはたき棒で修正はきくものの、大幅に取り込みすぎると蛙になったまま二度と戻れない。
並べられた蛙の石像は、この修行に失敗した者たちです。

「はっきり言うとじゃ、あの自来也ちゃんですらカンペキにこなせんかった。
 自来也ちゃんは仙術チャクラを練ると少し帰るに化けてしもうとった。
 それでもうまく練りこめた方じゃ。」

自来也が仙人モードによって蝦蟇化したのは、この修行方法によるところだったのです。
おそらくは蝦蟇油を使わなければ、自然エネルギーを得るには
人間が生きている時間だけではたりない莫大な時間や労力がかかるのでしょう。
改めて覚悟を問われたナルトは、自分の忍道自来也と同じであるとその覚悟を述べます。