.トビの思惑

【トビについて5】*1では、
トビの去り際、雨が降り出すシーンから、
トビとペインとで目指している最終目的が違うのではない――
暁が一枚岩ではないかもしれないという考えを述べさせていただきました。

さて、

「ナルトは“暁”が狩る。“鷹”はもう一方を当たれ。」

――と言いつつ、九尾(ナルト)に接触したトビは、
木ノ葉勢があっても容易に捕獲できる力の差を見せ付けながら、結局ナルトを泳がせています。

「お前が狩れ。リーダーとして失敗は許さん。」

ペインに九尾はお前が狩れという命令をしていますが、
いち早く尾獣を集めるのが目的なら、このとき自らが捕獲すべきなのです。
逆の言い方をすれば、尾獣を集めることは、
さして性急に行われる必要はなかったということになります。
サスケとイタチを優先したというのもありますが、
わざわざ木ノ葉勢の前に姿を現す必要があったのは、
ナルトたちをサスケとイタチの兄弟対決の場に向かわせないための足止めだと考えられますが、
だとしてもトビほどの実力なら、
ナルトをさらって、サスケを追ってきた木ノ葉勢を攪乱するという
一石二鳥の業もなすことができたはずです。
トビが何もしなかったのは自分が手を下さなくても、ペインが狩ることになっているから。
見方を変えればペインにとらえさせることが目的の一つではないでしょうか?

「どこかしらに問題はあったが、皆、己の意思で“暁”に貢献してくれた。
 デイダラ、サソリ、飛段、角都…
 彼ら無くしてここまでの進展は無かった。
 そのお陰でオレのシナリオ通りに事は運んでいる。」

という台詞にある通り、トビの行動は計算づくです。
そして桟橋でゼツと語らうこのシーンですが、
リーダーであるペインの姿はありません。

「これで安心しました…。アナタが黒幕なら私の立ち回りもやりやすい。
 水影様…いや、マダラさん。」

とトビに対して鬼鮫が“黒幕”という言葉を口にしている点。
何に対しての“黒幕”であるか――それはペインということになるでしょう。
つまり、暁内でトビは自分の思い描くシナリオを進めるため、
リーダーであるペインを体よく蔑<ないがしろ>にしているのです。
そしてそれは計算の一つでもある。
――同様に九尾をわざわざペインが狩るように仕向けたことは、
トビにとって都合がよく、ペインにとっては都合のわるい何かを計算づくでの行動でしょう。




暁を二分する壁の存在、そしてゼツの立ち位置…
少々込み入っているようです。