402 『最後の言葉』

1.最後の言葉

幼き日のサスケ。アカデミーから帰宅した兄の声を聞くや否や、
兄のもとにかけより、一緒に遊ぼう、とねだるサスケ。
宿題があるからそれが終わってからにしなさいと母ミコトが制しますが、
イタチは宿題は後でかたすからといって、幼い弟につきあってあげます。
森の中でのかくれんぼ。
イタチを見つけることができましたが、それは分身。
ずるい、そう言って肩を落とすサスケ。
夕食時――

「あのね父さん! 今日兄さんとかくれんぼしたんだけど、
 兄さん分身の術を使って逃げたんだよ。それってずるいよね!?」

今日かくれんぼした話を話題にあげ、
分身の術を使ったイタチがずるいと一点張りのサスケ。
ところがフガクは、もう分身が使えるのか、とイタチに感心します。
それを受けて今度はイタチに分身の術を教えてくれるようにねだるサスケ。
すかさずミコトに「宿題!」と言って制され、項垂れます。

「許せサスケ。また今度にしよう。」

弟の項垂れた頭<こうべ>を持ち上げるように、イタチは額を小突きます。


何気ない日常。仲の良かった兄弟。
平凡ながらも幸せだった家族の風景。


兄の手裏剣術を真似して足をくじいたサスケ。
イタチに負ぶわれながら、また今度一緒に修行してくれるように頼みます。

「ああ…。ただオレも任務を受ける身だし、お前も明日から忍者学校だろ。
 二人だけの時間もそう取れなくなるだろうけどな。」

少し理解できるようになったサスケは、ありがとうと返すように、

「それでもいい…たまに一緒にいてくれれば」

と微笑みます。


イタチとサスケ、最後の戦い。
サスケの眼へと伸び行くイタチの指先が額を小突きます。
そして――

「許せサスケ… …これで最後だ。」

イタチの優しい笑顔。
波が掻き消すように、かすんでいきます。
堪えきれない溢れる涙を流した後、サスケは決心めいたように言います。

「我らは“蛇”を脱した。
 これより我ら小隊は名を“鷹”と改め行動する。」

鬼鮫との戦いを掻い潜ってきたのでしょうか、そこには水月、香燐、重吾の姿。
そして暁の衣を着たトビの姿もあります。
仮面の奥からはサスケを見据えるように写輪眼を覗かせます。

「“鷹”の目的はただ一つ。我々は――木ノ葉を潰す。」

見開かれたその両目には、新しい万華鏡写輪眼

木ノ葉を潰す――その思いに迷いは見られません。

2.芽生える思い

再び起こるかもしれない戦争によって、奪われるかもしれない大勢の命を救うために、
一族の命を奪うことを決断せざるをえなかったイタチ。
誰よりも平和を願ってやまなかった――そして何よりも弟を愛していたイタチ。
ようやく兄の真実を理解したサスケ。
しかし、その想いを継いで決意したことは木ノ葉を潰すこと。
確かにサスケは一族を滅ぼした者、兄に復讐することを誓ってこれまで生きてきました。
ですから、兄の真実を知った今、その仇なす者は木ノ葉ということになるのでしょうが、
しかし、兄の愛を知ってなお、その心は未だ憎悪に焦がされ続けているのでしょうか?
兄が最も避けたかったストーリーを、兄の想いを蹂躙してまで歩むのでしょうか?
私にはそう思えません。
いまだその野望を明らかにしていないマダラの存在。
イタチが歩んできたように、サスケも“何かを守るために”
兄の想いを踏みにじりかねない茨の道を進むことを決意したように見えます。
――でなければ、サスケはあまりにも成長していないことになります。
確かに幼き日、あの事件はサスケに大きな心の傷を残しました。
心の時間はその日以来止まったままで、
ねだるばかりだった幼き日の独りよがりのままだということでしょうか。
――違います。サスケはその日を乗り越え、
真実を知るまで、確かに生き抜いてきました。理解しているはずです。


”“”の存在――これからますます表舞台に出てきそうですね。