九尾事件、そして一族事件。
マダラがこれらの事件に関与したのはなぜでしょうか?

1.マダラ

「その眼で九尾を手懐けた最初の男。
 オレの相棒であり師であり不滅の男。
 そして万華鏡写輪眼のもう一つの秘密を暴いた唯一の男。
 それがうちはマダラだ。」

イタチ自身がこのように語ったうちはマダラ。
おそらくは写輪眼使いである人々をまとめあげ、うちは一族とした創始者
そしてリーダーとなった、木ノ葉創設記の人間――
初代火影となった千手一族のリーダーに覇権争いで敗れはしたものの、
弟の万華鏡写輪眼を奪い取り、永遠の万華鏡写輪眼を手に入れ
誰しもの常識を超えて、いまもなおその瞳力と共に存在しているという、うちはマダラ。
ナルトの誕生した年。木の葉の里は九尾の妖狐に襲われました。

「かつて木の葉を襲った九尾の妖狐は自然発生した天災だと言われていたがの…
 実はそうでは無かったんじゃないか、と最近疑うようになった…。
 おそらくアレは人為的に口寄せされたものに違いない。」

それは誰しもが降って湧いた天災だと思い込んでいました。
九尾は邪気が溜まり淀んだところにどこからともなく現われる天災…
凄まじいチャクラをもち、人智を超えたその存在は畏怖されつづけていたからです。
当時の木の葉の里――長らく続いてきた戦争がようやく終焉を迎え、新しい火影が就任したばかりのとき
完全に鎮火しきっていたとはいえず、残り火はまだくすぶっていたという状況だったのでしょう。
戦争終結を望んでいるものばかりではなかったはずです。
“邪気が淀んでいた”――当時はこの言葉を疑ってかかるような人々はいなかったのでしょう。
ましてそんな人智を超えた存在を口寄せするなどという考えはなかったはずです。

「…いや…それがいたんだのォ、一人…。
 うちは一族の創始者…うちはマダラだ。」

「十六年前、九尾が木の葉を襲った事件は、もちろんマダラが起こしたものだ。」

しかしこの九尾事件、影で操っていたのはマダラであることが判明します。
木ノ葉の里を築いた礎の一人、しかしその自ら築き上げた里を九尾を使って強襲したのです。
一族虐殺事件。イタチは、これにもマダラが関わっていたと言います。
“うちは”、自ら築き上げた一族、それすら――と一見思えます。

2.九尾事件

「全てが本来の形に戻るのだ…
 写輪眼の本当の力が…このうちはマダラの力が。」

マダラの目的の一つ。
それは写輪眼の本当の力――うちはマダラ自身の力を取り戻すこと。
尾獣が集められている理由は、ペインが禁術をつくるため、という目的もあるでしょうが、
マダラとも関連がありそうです。特に手懐けていたといわれている九尾はそうでしょう。
ところで、その九尾を結果的に失ってしまうことになった、
俗にいう九尾事件をなぜマダラは起こしたのでしょうか?

「新たに“暁”を組織し、その影に姿を隠してな。」

暁はマダラによってつくられた組織。その目的はいくつかあると思われるものの、
その最終目的は世界を掌握すること。
木ノ葉の覇権争いに敗れはしたものの、マダラは初めから世界を手中におさめるために
木ノ葉隠れの先駆となる組織をつくったとしたらどうでしょうか?
初代火影在任当時から、実はマダラは木ノ葉ひいては火の国の中央政権を
裏から牛耳れるポジションにあったのかもしれません。それが“暁”の先駆。
木ノ葉を操りながら虎視眈々とその目論見を果たそうとしていた。

「ただ其奴…揉め事嫌いで腰の引けた三代目の教えが……
 染み付いてなければいいんだがな。
 三代目に染み付いたアナタのおじい様の教えのようにね。」

ダンゾウが初代火影の孫である綱手に言い放った言葉。
初代火影と里の方針を巡り対立したというマダラは、
穏健的な考え方と対極的な考え方をしていたと考えられることからも、
マダラの野望が見え隠れします。
そうマダラは木ノ葉の里を自らの野望のため――、
世界を掌握するための拠点としようとしたのかもしれません。

「ミナトは何か重大な事実を知っていて、
 その事実のために九尾の力を我が子に託したのだとしたら…」

戦争終結、そして四代目火影の就任。
それはマダラの望んでいることとは真逆のことだったと思われます。
戦争が終結し、各国が互いの存在を容認するようになってしまうことは、
世界掌握が遠のいてしまうことと言えるでしょう。
木ノ葉の方針を今一度転じなければなりません。
そこで、九尾を表向き“天災”としてけしかけたのです。
――つまり、木ノ葉を再び戦いを求める里へと導こうとしたのです。
ところが、あろうことか九尾は四代目波風ミナトの手に渡ってしまいます。
波風ミナトは裏で暗躍していたマダラの存在に気づいていたのでしょう。
その命を代償に九尾の陽のチャクラをナルトへ、陰のチャクラを屍鬼封尽し厳重封印しました。
二度とマダラに完全な九尾が戻らないようにしたのだと考えられます。
木ノ葉はこの一件で疲弊し、とても戦争を開局できる状態ではありませんでしたし、
マダラも九尾を失い、別の方法を用いざるを得ません。

3.一族事件

マダラが関与したとされるこの一族事件。
【変貌と疑惑1・一族と中枢】*1でも触れましたが、
一族の人々は密会を開いていました。このことに関して外部に神経質で、ただならぬ様相を呈しています。
一族と里の中枢をつなぐパイプ――、一族から期待されたイタチの役割です。
うちはは里の中枢と繋がっておく必要があったのです。
その理由は密会の内容と関係の深いことでしょう。

「…シスイは…最近のお前を監視していた…。
 暗部に入って半年…
 お前の言動のおかしさは目に余る。
 お前は一体何を考えて…」

イタチが一族事件を起こしたとされる少し前、マダラと接触していたイタチの発言を、
他の一族の人々、父であるフガクまで奇怪に思っています。
一族に辟易したイタチ――、その背景にマダラを感じとっていないかのような反応。
本来、うちは一族は血塗られた歴史の上に成り立っているもの。
それを意に介さず、呑々としていた人々が許せなかったのでしょうか?
――いや、むしろ木ノ葉の中枢とつながろうとしていたうちはは、
木ノ葉政権を奪取するくらいの大それた事を画策していたはずです。

「暗部は火影様の直轄部隊…。
 いくら我々警務部隊でも補足状が無ければ逮捕できない。」

イタチの拘束に際して、フガクは火影というものに遵守した発言をします。
火影や現在の木ノ葉中枢に対して不満があったというよりは、
エリート一族として名高いうちは一族の中から火影を出すこと――が目的だったのかもしれません。
そのための密会だった――と考えられないでしょうか。
そこにはマダラの意志は微塵も無かったのでしょう。
マダラはこの一族の考え方を危惧したか、行動に打って出た――それがあの一族事件ではないでしょうか。
マダラはその瞳力により、かつて骨肉の争いを繰り広げた血腥い歴史を再現しようとした――
生き残った強い者のみを引き連れて、世界を掌握するための駒を増やそうとしたのでしょう。
万華鏡写輪眼を授けるために、幻術で我を見失わせた人々同士を争わせた――
一族の人々が斃れている描写では一つの場所に複数の人が斃れています。
このことは、これらの人々同士で争いあった形跡とも考えられます。
フガクとミコトも、互いに万華鏡写輪眼のため戦ったのかもしれません。
しかし開眼する者はおらず、全ての一族の人々は息絶えてしまった。

「お前が開眼すればオレを含め万華鏡写輪眼を扱う者は三人になる。
 そうなれば……ククお前を生かしておく意味もある。」

万華鏡写輪眼を扱えるものが増えることを喜ぶようなイタチの台詞。
もしもマダラの意志でもあったなら、なおさらこの可能性は高いでしょう。

「次の脱皮で蛇のままか、それとも鷹に変わるか。見モノだ…サスケ。」

サスケに期待する素振りを見せるマダラ。次の標的はサスケです。
サスケはマダラの野望実現の為の駒となってしまうのでしょうか。