386 『新たな光』

1.新たな光(1)

万華鏡写輪眼のもう一つの秘密…その秘密に迫る前にイタチはうちは一族の経緯を話し始めます。

「かつてマダラにも兄弟がいた。…弟だ。」

幼い頃から互いに競い合い切磋琢磨してきたマダラとその実弟
二人は写輪眼を開眼し、兄弟の名は一族の中でも特別なものとなっていきました。
二人はさらなる瞳力を、写輪眼の力を求め競い合って成長を続けます。
そしてついに万華鏡写輪眼を開眼するのです。
兄弟はその絶対的な力を携え、いつしか一族の先頭へ、
兄のマダラは一族のリーダーとなります。
しかし、マダラは万華鏡写輪眼の酷使によって次第に失明していき、
とうとうその眼は光を閉ざしてしまいました。
マダラは光を取り戻すために、まさしく暗中模索しますが、
何一つ良い手立ては得られず、絶望します。
万華鏡写輪眼に取り憑かれたマダラは、光を求めるあまり、
終には弟の両の眼を、弟の万華鏡写輪眼を奪い取ってしまうのです。
新たな光を手に入れたマダラ。
奇しくもその眼は二度と光を失わなかったばかりか、
新しい瞳術をももたらす永遠絶対的な万華鏡写輪眼を手に入れたのです。

2.新たな光(2)

「ただし"瞳"のやりとりは一族間でしか行えない。それにこの方法で、
 誰もが新しい力を手に出来るわけではない。
 これはその後の多くの犠牲の歴史の上に築かれた事実…
 それがこの眼のもう一つの秘密だ。」

うちは一族はマダラの話を聞き及んで、万華鏡写輪眼を開眼するために友を殺し合い、
永遠の力と光を手にするために親兄弟で殺し合いを繰り広げた末に、
力を誇示しつづけてきた汚らわしい一族だとイタチは言い放ちます。
そうイタチが一族を見限っていた理由の一端はこういうことだったわけです。

絶大な力を手に入れたマダラは、その力を使ってあらゆる一族を次々に束ねていきました。
そして忍最強と謳われていた森の“千手一族”と手を組んで新たな組織を設立します。
それが後の木ノ葉隠れの里となったわけです。
マダラは千手一族のリーダーであった後の初代火影と、里の方針を巡って対立、
終末の谷での主導権争いの戦いに敗れはしたものの、
なおもまだその瞳力と共に在り続けているようです。“暁”を組織しそれを隠れ蓑に。
(初代火影と知り合った頃には、すでに万華鏡写輪眼を開眼していた――
初代との対立は親友同士というよりは、
里の方針を巡った単なる戦友間での争いだったようです。)

十六年前*1
九尾が木の葉を襲った事件もマダラが起こした事件であったことも明かされます。
しかし、四代目波風ミナトに阻止されてしまいました。

「今のマダラは負け犬だ…。うちはの本当の高みを手にするのは奴じゃない。
 …あの男、マダラを超え、本当の高みへと近づくのはこのオレだ。」

次の瞬間、イタチは今までに見せたことないほど邪気に満ちて破顔します。

「サスケェ!! お前はオレにとって新たな光だ! お前はオレのスペアだ!!」
「さあ来い! 弟よ!! 
 オレはお前を殺し一族の宿命から開放され本当の変化を手にする。
 制約を抜け己の器から己を解き放つ!
 オレたちは互いのスペアだ!! それこそがうちはの兄弟の絆なのだ!!」

万華鏡写輪眼による幻か、サスケの眼を邪悪な手が抉り取ろうとします。
その刹那、幻影から我を取り戻したサスケは、額に巻いた包帯とマントを外します。
サスケが見ていたのは、サスケの写輪眼が捉えたイタチの心の中…だったのでしょうか??

「やっと…たどり着いた」

サスケはイタチを見据えます。

3.イタチの真意、そして矛盾

イタチが打ち破りたかったもの、そして本当の変化とは――。
かつて警務部隊と諍いになったときに、イタチは次のように言っています。

「一族… 一族…。
 そういうあんたらは己の"器"の大きさを測り違え、
 オレの"器"の深さを知らぬから今そこに這いつくばっている。」

一族の血塗られた運命に背を向け、無かったことのように安穏としている一族の人々に対して――
とも捉えることができるでしょう。つまり一族は血塗られた運命にあるべきだ――と。

「オレの"器"は、この下らぬ一族に絶望している。」

しかしイタチはこの血塗られた一族の宿命を背負う自分をひどく忌み嫌っていたはずです。
だからこそ、自分の器を広く深く掘り下げようと、そしてマダラを超える高みを目指そうとした。
おそらくは――、一族に本当の変化をもたらすため。

万華鏡写輪眼とその光を手にするために、友を殺し、親兄弟に歯牙をかける。
その運命を血塗られた運命と言いながら、忌むものだとしながら弟を殺して万華鏡写輪眼を得る。
こんなにも型にはまった宿命通りに歩んで、なぜその宿命から解き放たれることがあるでしょうか?
本当の変化など得られるでしょうか? 全く同じ道を歩んでるのです。
イタチは気づいているはずです。
ではなぜ、そんなことをする必要があるのか――

4.永遠の万華鏡写輪眼

サスケの写輪眼が捉えたイタチの心底。
イタチの万華鏡写輪眼が見せたものも中にはあるはずです。
しかしやはり何か違和感を感じます。
そもそもマダラは弟の万華鏡写輪眼を奪って永遠の万華鏡写輪眼を手にしたはずです。
サスケはまだ自分と同じ眼(=万華鏡写輪眼)を持っていないようだと言っていましたね?
それだというのに、開眼していないはずの弟の眼を得ることで、
永遠の万華鏡写輪眼を得られることになるのでしょうか?
写輪眼が捉えたイタチの幻影、それと平行してサスケはイタチの言葉を思い出しています。

「ただ…お前とオレは唯一無二の兄弟だ。お前の越えるべき壁として
 オレはお前と共に在り続けるさ。」
「お前はオレを疎ましく思い憎んでいた。このオレを超えることを望み続けていた。
 だからこそ生かしてやる。…オレの為に。」

開眼していないはずのサスケの写輪眼。
マダラを超えたいと願い、己の高みを極め続けるイタチ。
血塗られた兄弟の絆、そして一族の運命。

イタチがサスケのではなく、サスケがイタチの万華鏡写輪眼を得るための伏線ではないか…
なんとなく感じていた事が確信めいてきたかもしれません。
イタチ…命を賭して悪態をついているのではないかと――。
弟に万華鏡写輪眼とともに、その思いを託すために。マダラを超えるために。
忌まわしき一族の、自分の運命と制約を断ち切るために。

「それから…夢なんて言葉で終わらす気はないが、野望はある!
 一族の復興とある男を必ず…殺すことだ。」

サスケは、自分の意志を昔このように表現しました。
そして、それは次の言葉に適<そぐ>う形で、
本当の意味をおそらく託される形で実現されるのではないかと思います。

「組織に執着し、一族に執着し名に執着する…
 それは己を制約し己の"器"を決めつける忌むべき事…。
 そして未だ見ぬ…知らぬモノを恐れ憎しむ…愚かしき事!!」

万華鏡に取り憑かれたマダラを負け犬と呼ぶ理由――

「一族などと…ちっぽけなモノに執着するから、本当に大切なモノを見失う…。
 本当の変化とは規制や制約…予感や想像の枠に収まりきっていては出来ない。」

そう本当に大切なモノです。

*1:(x+3)-16=(x-13)年 x年は第一部開始