380 『その面影』

今回は急展開。記事も長くなります。

1.その面影(1)

ペインの一人に弥彦の面影を見る自来也

「一体どういうことだ…弥彦は死んだんじゃ…それにその眼…」

しかし、弥彦と思われるペインは、次のように言います。

「…オレに弥彦の面影を見たか。やはりかつての師だけはある。
 …だがすでに弥彦は死んだ。ここに居るのはペインだ。」

弥彦という人物がいたことを肯定し、
弥彦はすでに死んだと語るペイン。
自来也の知っている弥彦はいない――
そこにあるのはペイン。
自来也、そしてペイン両者とも共通の弥彦を知っているということは、
この場に長門の意思が介在していることに他ならないわけですから、
長門が所有していたはずの輪廻眼を、この6人が等しく皆所有しているということは、
すなわちこの6人全員が長門と見なせるかもしれません。

「いや…違う…。"輪廻眼"を見て最初の奴を長門だと思い込んでしまったが…
 ワシが知る長門とは違和感がある。
 …それによく見ればあの六人の中に長門の面影を感じる奴は一人としていない…。
 それなのに弥彦の面影を持ち…長門の"輪廻眼"を持つ者がいる…」

弥彦なのか長門なのか、自来也の問いかけに我々はペイン、神だといって
六人で襲い掛かるシーンで場面が変わります。

2.その面影(2)

降り続く雨にシズネが憂いながら、自来也様は大丈夫と綱手を気遣います。

「あいつは帰ってこない…」
「えっ?」
「私はそっちに賭けた。
 私の賭けは必ず外れるからな。」

綱手は精一杯な様子で笑顔を見せます。
不安を拭いきれていないながらも気丈に振舞う笑顔。
綱手が笑顔の描写は初めてじゃないでしょうか?
岸本先生は情景や心情の描写をうまく描きますが、
この描写は――多くの人に自来也の死亡をはっきり予期させる展開となってしまったことでしょう。
以前、綱手と呑んだ後の会話で、

「じゃあお得意の賭けといこう…お前はワシの死ぬ方に賭けろ。
 お前の賭けは外れるからのォ。
 そん代わりワシが生きて帰ってきた時は…」

と発言したときにすでにアスマの二の舞を踏む展開になることを
多くの人によって予想されていたことです。
アスマは他の選択肢を考えず、暁という脅威を前にして"棒銀"を打ちましたが、
今回の展開も言わずもがな。

「ワシらの役目は次の世代のために手本となり、手助けをすること。
 そのためなら笑って命を賭ける。
 それが年寄りの格好良さというものだろーのォ。」

俯瞰している私たちから見れば、それは到底最善の一手だとは思えません。
しかし、登場人物達はそれぞれのイデーに従って最善の一手を打とうとしています。
その状況を生で体験していない私たちにしてみれば、
その手を最善でないといえるのは、結果論に似たものです。
ここに自来也やアスマの生き様を見ます。
岸本先生の描写がうまいと私が感じる理由はここかもしれません。

「男はフラれて強くなる。
 それに幸せなんてのは男が求めるものじゃないのォ。」

「カッコつけやがって…
 帰ってきたら…そろそろカッコつかなくさせてやるかな…」

綱手のこの言葉は、自来也を考えられないといって思いっきりふったときとは明らかに違います。
しかし思いに気づいた時にはすでに遅い、というのが世の常。

でも、そんな描写や予想を裏切って帰ってこないものかと期待してしまうんですよね。私は。


3.その面影(3)

木の葉組の前にはトビが急に出現。
マダラを匂わせないおちゃらけた様子は変わりありません。
後ろから螺旋丸で急襲したナルトは、トビの体をすり抜けてしまいます。
剣を喉に刺す貫通マジックの典型的なトリックとして、
実は剣がC字型に湾曲していて、真正面から見ると貫通しているように見えるというのがあります。
トビの術はこれを空間に応用したもので、
ナルトが接触する空間をある別の空間に入れ替えて、
トビをはさむ現在の空間とトンネルをつくるようなものじゃないかと考えられます。
ペイン6号体の術吸収と似たようなからくりではないでしょうか?
貫通するか吸収されるかですね。
いずれにしろ何らかのからくりがあるはずです。


4.その面影(4)

"蛇"の前に鬼鮫が登場します。

「ここからはサスケくん一人で行ってください。
 イタチさんの命令でしてね…
 他の方々はここで待っていてもらいましょうか。」

香燐の制止を振り切って条件を呑みこむサスケ。
単身、うちはのアジトへと向かいます。
一方で残された水月は、鬼鮫に戦いを挑みます。

「忘れたか。鬼灯満月の弟、鬼灯水月だよ。」

因縁めいたように水月鬼鮫に兄の名を口にします。

「お兄さんと違いやんちゃですね。少し削ってあげましょう。」

そう言って、水月VS鬼鮫が始まりそうなところで場面転換。
荒廃した玉座のようなところに座るイタチ。
その後ろには第一巻の最初のあらすじの絵を思わせるような石碑。
真ん中の"狐"という文字。
まわりにある尾に似せたような巴紋。
確実にうちは一族が九尾と関連していることが分かります。
【変貌と疑惑1・一族と中枢】 *1
【変貌と疑惑5・シスイの遺書】 *2
【変貌と疑惑8・事件の核心、不自然な犯人】 *3
と組み合わせると、
フガクがイタチを中枢と繋がらせようとした理由、
怪しい一族会合、"道"、なぜうちは虐殺事件が起こったのか――
なんとなく分かってきた気がします。突き詰めれば、

  • うちは一族はもう一度九尾事件あるいはそれに類似したことを画策していた
    • 木の葉の中枢による表向きは事件という極秘裏の粛清

という可能性。
木の葉が火影の思惑の一枚岩でないことは“根”の存在で明らかになりましたが、
表面的でない奥深い部分が露になってきそうです。
――事件の真相が明かされるのももう間もなくでしょうか。


サスケを前にして、

「その写輪眼…お前はどこまで見えている」

と問いかけます。それに対して弟は、

「イタチ…アンタの死に様だ」

という場面で次号の展開を待つ形となります。