378 『一対一』

.一対一

自来也はいったんパイプの中へ退きます。

「あいつらのうちの一人が長門だとしても、
 そうゴロゴロ“輪廻眼”がいるとは思えんですしのォ。
 一体どういうことですかの!?」

自来也はいいます。父蛙〈頭〉は分析をはじめます。

「何者かは今はまだ分からん。…しかしほんの少しじゃが、推測はできる。
 奴ら三人の視野は繋がっていて共有しとるっちゅーことじゃ。
 それがあの眼の能力じゃろう。」
「あやつら一人一人に見えとる映像は監視カメラの様に
 別々の三台のカメラで撮られた映像を一度に見とるのと同じじゃ。
 つまりじゃ、一人でもターゲットを見ておけば、他の二人はターゲットを
 直接目視せずともベストなタイミングで攻撃や防御へ移行できる。」
「視野は人の三倍。しかも白眼と違うて印を結んでチャクラを練らんでも
 常に互いの死角をカバーしあっておる。コンビネーションは最強じゃ。」

輪廻眼の能力の一端――でしょうが、
つまりそれぞれの視野を最大限活かし攻防を繰り広げるには、
ただ映像が見えているだけではだめで、
視覚処理能力が通常の人間の3倍あるということも同時に推測できるでしょう。
簡単に言えば今場に出ているペインはすべて、
ある何者かが意のままに動かすことができる操り人形です。
つまり視覚の共有だけでなく、
思っていることや考えていることも皆同じだとも考えられます。
事実、口寄せ術者のペインのみが口を開いて言葉を発しています。
三人が同時に口を開いたり、別々のことを考えているシーンもありません。


体術も忍術も使いづらい、となれば幻術だ――
父蛙の提案に自来也は難色を示します。幻術は不得意のようです。
自来也以上に難色を示したのが母蛙〈姐さん〉。難色というか拒絶。

「この歳になって父ちゃんとデュエットやこう出きるか!
 こっ恥ずかしい!!」

彼らの最強の幻術とは歌で相手の聴覚にうったえてはめる術で、
音と音の組み合わせ、メロディーを聴かせることで幻術にかけるようです。
これで"カエル変える"状態になればまさにタッチミー。
パイプの中を木霊する蛙の歌声。

耳をそばだてた口寄せ術者ペインが、一瞬眩暈に襲われます。
両肩に音源が存在する自来也はもろにこの効果を受けそうですが、
幻術対策をしているのか大丈夫なようです。
幻術、そして影分身で背後をとり【火遁・大炎弾】を放ちます。
そこを"でかい奴"がシャットアウト。これは囮で、
炎によって視界を封じることを目的とした攻撃です。
もう一人の新しく口寄せされたペインは、最初の攻撃時に眼を潰していたので、
残る視界は一つ。口寄せ術者のみとなります。

「思った通り、こいつらは一個体に一系統の能力しか
 持ち合わせて無いってことだ!」

連携を予測して黄泉沼の罠を張っていた自来也の思惑通り、眼を潰したペインの足を止めます。
そして口寄せ術者のペインを死に体にするのです。


最初の絵でペインは全員右の腕から黒い何かを出しています。
次回はペインの本当の正体に迫れるでしょうか?