567 『木ノ葉の里の人柱力』

扉絵には雲隠れのような忍び衣装を着込んだ一尾から九尾までの人柱力たちと、
岩を試し切りする出撃準備が整ったサスケです。

1.木ノ葉の里の人柱力(1)

「サスケと香燐は無事だろうか?」

どこかの森林を歩く重吾と水月

「そんな心配は必要するだけ損かもよ。」

と嘯<うそぶ>くかのように口にする水月

「香燐とサスケが生きて二人でいるとして、
 ボク達が二人を見つけて感動の再会ってなると思う?」

重吾は少し考えつつ、何も答えません。

「いいかい。香燐はサスケといちゃつき合いたい。
 …ならボク達は二人の邪魔者ってこった。」

水月。香燐がすでに囚われの身であることは、
まだこの二人は知らないのです。

「……そうか…。なら、どうする?
 刀集めを続けるか?」

重吾は聞き直します。

「もちろん二人の邪魔をする。
 …それが刀集めの次にボクの楽しみだしね。
 まずは大蛇丸のアジト、回るか!」

今後の方針は決まったようです。

「来てくれたんだ。
 カカシ先生!! ゲジマユ先生!!」

一方、尾獣たちが暴れまわる戦場に駆けつけたカカシたち。

「第七班の教え子がガンバリすぎてんのに、
 休んでる訳にはいかないでしょ!」

とカカシ。

「あ! あいつ! 写輪眼で、輪廻眼が繋がってて、左目と右目で!
 左の胸に杭が刺さってて、えっと…えっと!」

複雑な状況を少ない時間で必死でに説明しようとするナルトですが、

「落ちつけ…。
 何言ってるか分からんぞ。」

支離滅裂な単語の羅列ではガイをうまく理解させられません。

「右目に写輪眼。左目が輪廻眼。
 左胸にペインと同じ杭か…。なるほどね…。」

しかしナルトとの付き合いが長いカカシは、状況を把握しきれたようです。
長門のペイン六道と同様で、それを構成しているのが穢土転生した人柱力たち。
ただし片目は写輪眼、というわけです。

「すまねェ、八っつぁん!
 大丈夫か?」

と八尾を気遣うように声を掛けるビー。

「痛みは同じだろ!
 お前こそ大丈夫かビー!?」

八尾もまたビーを気遣います。
動こうとするナルトですが、先ほどの珊瑚掌のダメージでしょうか、
大きな貝殻が背中にでき、動きが鈍ります。
それを見たガイは《木ノ葉壊岩升》という肘打ちで貝殻を砕きます。
そんな彼らにまさに猪突猛進の勢いで突進してくる五尾。
五尾に対して構える一同。ですが、五尾の狙いはナルトたちではありませんでした。

「グゥウウ…。苦しい…。
 この私が…こんな奴に…」

巨大なチャクラの鎖を召喚して五尾の顎を縛り付け、薙ぎ倒すトビ。
小型の恐竜のような出で立ちの五尾ですが、
"私"と自分を呼称するあたり誇り高そうです。

「(こいつ…トビを攻撃しようとした…?)」

カカシもこの異変に気づきます。
どうやら五尾はどうにか操られていない意思の中で、
必死にトビに反抗しようとしていた様子。
カカシはトビが尾獣を完全にコントロールできていないことに気づきます。

2.木ノ葉の里の人柱力(2)

「おい…聞こえたか、ナルト? 声だ。」

ナルトに確認するように、八尾が言います。

「……聞こえた…」

ナルトも頷きます。

「あれは尾獣…五尾の声だ。」

呻くように呟いた内なる五尾の声。
八尾と九尾には正確に伝わっていました。

「オレ達尾獣にもちゃんと感情がある。
 ああいう扱いをされるのを見ると、さすがに腹が立つ…!」

八尾は傷の痛みよりも、五尾のひどい扱いを見て憤ります。

「ケッ! 何を今さら…。
 ワシ達尾獣をペットにしてきた忍達が、
 ずっとやってきたことだ!
 八尾…てめェとビーとかいうガキだけが特別なだけだ!」

一方、九尾は人柱力の中に封じ込められることで、
ずっと自由を奪われてきた自分の半生を振り返るように嘯きます。
これが九尾の"憎しみ"の本体でしょう。

「フン…どうだかな、九尾。
 オレは分かってんぜ…九尾……。お前…。」

べらんめえ状態な九尾ですが、
事情を理解している八尾にとっては、
それはただの口先での威勢に過ぎないと確信しているかのようです。
なぜなら、九尾は――

「ごちゃごちゃうるせェ…!
 仮にもてめーは尾の数から言っても、
 ワシの次に強い八尾だろ!
 さっさとやっちまえ! ワシは寝るとこだ!」

しかし九尾は八尾につけいる隙を与えないかのように、
取り合わないとばかりに瞼を閉じます。

「尾の数で強い弱いを決めんじゃねーよ!
 てめーは昔からそうだ!
 だから一尾の狸に特に嫌われてんだ!
 って聞いてんのかコノヤロー!
 狐が狸寝入りしてんじゃねーぞ、コラ!!」

そんな調子の九尾に八尾もテンションが上がってきます。

「八尾と九尾が…ケンカしてる……」

そんなやりとりは人柱力であるナルトとビーにも伝わっています。

「尾獣同士はテレパシーで会話♪
 それってレアだしすごいわ♪」

ビーは陽気な口調で、かえってケンカを煽るような感じです。

「さっきから何ブツブツ言ってんの、ナルト!
 来るよ敵! オレが来たからって気抜くな!」

尾獣どうしのやりとりに気を取られていて、
一瞬、集中を欠いていたナルトですが、
カカシに言われて再び集中しなおします。
向かってくる人柱力たちに、カカシは写輪眼を全開にして雷切で、
ガイは八門遁甲第六景門を開くことで応戦します。
しかし人柱力たちで構成されたペインは、
餓鬼道のチャクラ吸収、畜生道の口寄せ、人間道のチャクラ引き抜き、
地獄道の回復術や復活術、修羅道のカラクリ攻撃、天道の引力斥力攻撃
といった攻撃を全く使ってきません。

「すでに知られ対処法の分かっているペインの他の術。
 わざわざチャクラを割いてまで使えるようにするほど、
 バカじゃないってことか。」

ガイの言うようにペインシステムを完全に構築するなら、
わざわざ人柱力という素材を使わなくても良いでしょう。

「瞳力だけで七体もの尾獣を完全にコントロール下に置くには…
 相当のチャクラを使うだろうからな。」

というよりも、さすがのトビも尾獣たちのコントロールで手一杯のようです。
ここには一尾はいませんが、一尾も統制状態にしておく必要があるのでしょう。

「…はたけカカシ。よく見抜く…いい眼を持ってるな…。
 さて…では少し強がってみるとしよう。」

意気込んだトビは、荒々しい大猿四尾と巨大蛞蝓+蛭の六尾を解放します。

「これ以上九尾チャクラで分身はダメだ。
 本当に死ぬぞ、昇天! ズレまくりの意気衝天!」

影分身で陽動をかけトビを叩こうとするナルトですが、
ビーにこれ以上の分身は命の危機に瀕することを忠告されます。
九尾チャクラ解放状態を無暗に続けられなくなってきた様子。
最初に飛ばしすぎたようです。

「ビー。お前気づかねーのか?
 拳を合わせたハズだろーが!」

と八尾は言います。

「そんだけ分身してりゃとっくにナルトは瀕死のハズだ。
 そうなってねーってことは九尾がナルトのチャクラを取ることを
 途中で止めてるってことだ!
 なあ…九尾…。お前らに何があったか知らねーけどな。」

すでに九尾はナルトからチャクラを引き抜こうとすることを止め、
ナルトに身を委ねているような状態なのです。
これが八尾がさっき言わんとしていた、九尾の変化です。
九尾は沈黙を保ったままですが、
人柱力という境遇にめげず、自分の不幸を尾獣のせいにはしないで、
九尾の憎しみも理解するようなナルトの言葉を思い起こしながら、
静かに考え込む様子です。
六尾の猛毒の霧がカカシとガイを追いやり、
一方で八尾は四尾に力任せに投げ飛ばされ、
ナルトは四尾の大きく開いた口へとまっしぐら。噛み殺される一歩手前です。
そのとき九尾はついに決断したようです。

四尾と六尾という二体に対して、
八尾と九尾が共闘する形になるのでしょうか。