495 『闇ナルト撃破』

.闇ナルト撃破

「九尾のガキ。モトイを助けようとしてくれて、サンキュー!」

ビーの蟠りもとけ、打ち解け始めたナルト。

ビー: 「お前の事はもう一度再考♪
  お前なかなかいい奴再考♪」
ナルト:「タコのオッサンイカすぜラップー♪
会えてよかったホントにラッキー♪」

ナルトは嬉しさを表しているのでしょうが、
ラップをつくりなれていないためか、
しっかり韻が踏めていないのはご愛嬌ということでしょう。
ビートをかませと突き出された拳にナルトも答え拳を返します。

「(タコのオッサン…モトイのおっちゃんに信頼されてるし、
  タコのオッサンもモトイのおっちゃんを信頼してる…
  よし! 決めた!)」

ナルトもビーの人柄を認めた、という感じでしょう。
お互いが認め合えば、お互いの関係はより深まっていくものです。

「ったく…てばヨーてばヨーってよ…
 うるせえってばヨー♪」

てばヨーというフレーズが気に食わなかったはずのビーが、
あえてそのフレーズを口にするということは、
繰り返しになりますが、ナルトを認めたということです。
ビーはナルトに再び真実の滝に向かうように言います。


再び真実の滝――。
現れたナルトの闇の部分。

「オレを追い出そうとしても無駄だ…。
 お前の事はオレが一番分かってる。」

そう告げるナルトの闇。
しかし、“理解している”という部分はある意味、嘘ではなく、
いままで白眼視されたり、虐げられたりしてきた耐え難い状況の苦しみを、
自分の中の“闇”という部分と共有する、
あるいは多くを担ってもらうことで、やわらげてきたとも言えるでしょう。
ナルト自身もそのことを分かっていたのでしょうが、
先ほどはその闇自身をすぐには認められなかったのでしょう。
闇の自分にイメージとして見せたのは、
一楽で頼まれて書かなかった自分のサイン。

「あいつらはオレ達をずっとだましてきた奴らだぞ!!
 勝手な掟を作ってのけものにしてきた!
 思い出してみろ!!
 苦しかったよなぁ…。辛かったよなぁ…!
 …お前を分かってやれんのはオレだけなんだぞ!
 里の奴らなんか信じるな!!」

闇のナルトには里の人々は
憎しみというフィルターを通してからしか見えないのです。
里の人々が認めてくれるようになったことも、
好意的に接してくれるようになったことも、
全て憎しみというフィルターからでしか見ることができない。
もちろんそれはナルトとしてみれば当然の気持ち。
でもそのままでは憎しみの連鎖になるところを、
ナルト自身は理解しています。
信じなければいけないことを――

自分を信じてみようと思うんだ。
 里の皆に信頼されてる自分ってのをよ。

憎しみに対してのナルトの答えが、“信じる”ことにあるとするなら、
身近にある自分の憎しみにも“信じる”ことが答えとなるでしょう。

「タコのオッサンに気付かされた。
 自分ってのを全く疑ってもねェ…。すねてもねェ。
 自分に誇りを持ってる!」

そう闇の部分に語りかけるナルトに、

「お前は…オレが邪魔なのか!?
 なら…、オレはいったい…何だったんだ!?」

と声をあげる闇。
憎しみという重たい部分を背負ってやっているのに、
いまさら邪魔扱いするのか――ということです。
それに対してナルトは、

「お前はオレになりゃいい…!
 お前もオレなんだから。」

と答えます。憎しみ=闇があったことも認める。
闇の部分が憎しみを背負ってくれていたことも認める。
でも、ありのまま全ての真実を、闇を、受け入れたとしても、
自分を信じてみることから始めるという
ナルトの気持ちは変わらないわけです。

「…今までありがとなぁ…。もういいんだ。」

そして、憎しみに真正面から向き合うこともできる。
そんなナルトの成長が窺える場面です。


――闇は消えました。

「これから九尾の力のコントロールをやってみるか!
 今からオレが…お前の師匠♪
 覚悟を決めろ でないと死傷♪」

そんなノリで滝の中の神秘的な空間に案内されたナルト。
今度は自分の闇でなく、九尾自身と語り合うのでしょう。
おそらく、これから九尾自身が語る新しい真実も
浮かんでくるのではないかと思います。
16年前、九尾を操って里を襲わせた人物のことも――
そしてサスケにナルトを殺めることを引き止めたことも――
九尾にもまた真実が眠っています。
ナルトにはこれらのこともできるだけ明かして欲しいと思います。