493 『闇ナルト』

すみません、遅くなりました。
今回人柱力について興味深い事実が明かされます。

.闇ナルト

「里の奴ら今までさんざんオレ達を
 除け者にしてきたくせによ。」

さんざん邪魔扱いしてきた奴らが、
掌を返したように歩み寄ってきたこと。
あらわれた邪悪なナルトは、
心の奥底にある淀んだ感情を浮かび上がらせます。

「見りゃ分かんだろ……。
 オレがお前だ。」

自分がナルト自身であること、
そして憎しみの感情が存在していることを明瞭にします。
しかし、ナルトはいまいちいま対峙しているのが、
本当に自分かどうか理解していない様子。
ところで彼のいうオレ“達”は、ナルトと誰を指すのでしょうか?
どうやら彼の中では憎しみにとらわれてないナルトを
すでにもう一人の自分として認識していて、
本来自分に付随するものとして考えているようです。
なぜならナルト自身の奥底にある感情と直結するもの、
すなわちより本心に、本当の姿に近いという理屈のためでしょう。
一つ明瞭な線引きをするなら、
九尾に気に入られていることだということも明かします。

「(今まで…こいつと九尾が…。)」

ガマ寅がいっていた九尾と憎しみの連結。
ナルトが九尾の力を使おうとしたときに、
この憎しみの側面をもつナルトが九尾に取り入っていたのだと、
ようやくナルトは理解します。

「そういう事だ…。オレはお前自身だ。
 オレを追い出せはしねーぜ。ニセモノ!」

戦い始める二人。まさに鬩ぎあい――です。


一方熊と相撲をして遊んでいるビー。
ビーの中にいる八尾がビーに話しかけてきます。

「おいビー。遊んでんなら、
 九尾のガキを見てやってもよかったんじゃねーか?」

八尾も昔は荒れていたようです。
しかしビーと出会い変っていった。

「同じ人柱力同士、もっと協力してやってもよ…。
 オレも九尾は好かねーが…、あのガキは見込みがあるぜ。
 オレも昔はむちゃくちゃだったが…、
 お前に会ってこうなった…。
 なんとなく昔のお前にも……」

同じ人柱力として、力を貸してやっても間違ってはない…
八尾の言わんとするところは、
尾獣という巨大な存在を取り込んだビーの器に
ナルトは匹敵するだろう、ということでしょう。
でもラップをバカにするナルトをビーは認めないといいます。

「それに、あいつは…」

と最後にビーは何かナルトについて言おうとしましたが、
ラップを認めない云々は置いといて、
ナルトの中の何かをビーは悟っているようです。

一方ナルトは自分自身の闇の部分との鬩ぎあいを続けますが、
まったく互角で勝負がつきません。
ならばと多重影分身の術で数で片をつけようとしますが、
しかし向こうも負けじと多重影分身。
一向に決着がつく気配はありません。

「何がどうなってるんですか?」

どうやらこの鬩ぎあいはヤマトたちには見えないようです。
なぜならこの戦いは真実の滝で座禅を組んでいるナルトの心の中での戦い。
自分の闇との対決に一旦距離を置くように、
座禅を解いたナルトは息も絶え絶えで、ヤマトに起こった出来事を話します。

「オレと…同じ奴が出てきた…!
 そいつは……、……闇の部分のオレだった。」

何をしても勝負がつかない。
しかし勝たなければ尾獣の力を制御することができない、
とモトイはナルトに言います。
そしてその内なる邪悪な自分に勝つ術も分からないとも。
ビーもおそらくは教えてくれないでしょう。
しかし、ビーにも邪悪な部分があった時期もあったことを思い巡らすと、
ビーと自分に何の相違点があるのか、
ビーの生い立ち、人柄などについて
モトイに教えてもらうことに行きついたナルト。

「他人の事をペラペラ喋るのは好きじゃないんだが…。
 ナルト…お前はビーさんと同じ人柱力だしな…。
 九尾を安定させるのも世界平和に繋がる…。
 いいだろう。」

といってモトイが話し始めてくれたビーの過去。
人柱力として煙たがられていたビー。
しかしビーは落ち込んだり愚痴をこぼしたりすることもなく、
いつもひたすら明るく前向きで、
そんな厳しい周囲を逆に和ませるくらいの器だったようです。
人柱力としての己を恥じるどころか、
むしろ誇りをもって、その辛い環境をものともせず邁進していったビー。
それは兄、雷影のためでもあった。

人柱力というのは裏切りがないよう、
 昔から五影の兄弟や妻など、
 近い血縁関係にある人物が選ばれるのが常だ。

 人柱力は里長である影を守る力であり、
 影の力を誇示する存在でもある。」

人柱力はその特殊性ゆえ、どうやら影クラスの血族や親戚などの縁者に
その役割を負わせる習慣が通例となっている様子。
二尾の人柱力である二位ユギトも、
ビーや雷影と近縁の人物だった可能性が高いです。
思えばナルトも我愛羅も、それぞれ火影の息子と風影の息子という立場でした。

人柱力という存在を理解し、ビーを尊敬しているというモトイ。
しかし、ナルトが修行のコツを代わって聞いてくれるようお願いしますが、

「オレにはそんな資格はない……。」

といって断ります。

「オレはビーさんを殺そうとした人間だ。」

ビーを尊敬しているといったのに何故、という表情を浮かべるナルト。
モトイは30年も前の事が発端となる昔語りを始めるのです。