492 『あいさつ』

1.あいさつ(1)

「タコのオッサンありがとだってばよ!!」

イカを倒したビーは八尾の姿から戻ります。
ナルトが口にした“だってばヨー”のフレーズが気にかかるのか、
ビーはライム帳なるメモ帳を開き、
なんだか考え込みます。そして――

「…こいつとは合うか合わないどっちかなぁ?
 いや敢えて言うならアウトだろ。ウィー♪
 オレはガキがにがてなアウトロォォォオオン♪」

と演歌ラップなるものを披露。
ナルトはそんなビーを見て疲労

そんなこんなで岸に着き、案内人のモトイなる忍に連れられ、
島に着いた木ノ葉の忍たち。
なんとその面々の中にはガイもいて、
どうやら船酔いで完全にダウンしているようです。
今回のガイは愛弟子のリーにその姿を見せることはできないほど、
いつもの青春(?)オーラが微塵も感じられません。

「ガイさんって船がこんなにダメとは知りませんでした。」

ヤマトとナルトにも心配されています。


一行は島の中腹を目指して進んでいると、なんと巨大なゴリラに遭遇。
ナルトの世界に出てくる動物(取り分け猛獣)達は、皆巨大ですね。

「キングちゃん。慌てるな!
 こいつらは大丈夫だ。」

キングちゃんなるゴリラは、
自分のなわばりを侵されたと考えたのでしょう。
しかしビーにまるで友達のようになだめられ、
それ以上は何も言わず、親指を突き上げて挨拶を交わします。

「ビーさんはこの島の猛獣達の頂点にいて、全て手なずけてる。
 だからビーさんがいる限り、とても安全な場所でもある。」

モトイはビーを雲隠れの英雄の中の英雄と紹介します。
しかも己の中にいる尾獣をも完全に手なずけた存在。

「この島は…八尾をコントロールするために修行した場所でもある。」

この島はビーが八尾の制御を修行した場所でもありました。

2.あいさつ(2)

ビーが尾獣を完全にコントロールできるということを聞いて、
ナルトが居ても立ってもいられないのは想像に難くありません。
ビーが居る別荘のような場所へさっそく訪ねにいきます。

「…てばヨーのガキか…。何だ?
 オレ様のサインでもほしいのか?」

そう軽い気持ちで応対しようとしたビーに、
ナルトは真剣な眼差しで修行をつけてほしいと嘆願します。

「オレってば九尾の人柱力だ。
 けどまだ九尾をコントロールできてねェ…。
 だから尾獣のコントロールの仕方を教えてくれ!」

ビーはサングラスの向こう側からナルトの眼光を見定めているのか、
しばし無言の状態が続きます。しかし、ビーは、

「やなこった…。オレ様はブラザー雷影に休暇命令を受けてここへ来た。
 めったにない休みを返上して何でそんな事をしなきゃならねェ。
 バカヤローコノヤロー!」

休暇のつもりで来たのに、
九尾の修行に付き合わされるというのはありえない、
とばかりにナルトを突き帰そうとします。

「オッサンもオレと同じ人柱力だろ!
 だったら協力してくれてもいーじゃねーか!!」

ただナルトの頼み方が悪いともとれなくもないのも事実で、

「…態度がでかいな…居直りかいな、ウィー?」

と辟易とする様子。
ナルトは何かを感じ取ったのか、

「オッサンのグラサン。顔も濃いけどカッコイイ♪
 ウィ――――イイイッ♪」

とラップをしてみます。

「なかなかいいビート刻むじゃねーか、ボウズ!」

ビーも少し気を許したのか、拳を突き出し、

「ヨウ!
 まずはあいさつだ!
 オレさまのグーにグーを重ねろ。
 ビートかましながらな!」

そう言われ、ナルトは、
意気揚々と歌い出しますが

「オッサンのグラサン♪ ウサン臭…」

――と口が滑って、さすがにナルトも気まずさを感じたか、
こうなったらと、お色気の術を使いますが全く効果なし。
というわけで失敗してしまいます。


意気消沈し、ビーに腹を立て、今度はモトイのもとを訪れます。
ビーの修行についてどんな修行をしたのか訪ねます。

「雲隠れの英雄だか何だか知んねーけど!
 ケチでガンコでダジャレばっか言って!
 同じ人柱力ならオレの事だってもう少し分かってくれてもいいだろーに!!
 大体………」

――と臍を曲げて愚痴を吐くナルト。
こういうところにまだナルトの子供っぽさは残っていますね。
しかしそれはモトイを怒らせてしまったようで、

「てめーにビーさんの何が分かる!
 それ以上グダグダ言ってたらオレが許さねーぞガキ!」

と胸倉を掴まれてしまいます。

「てもーも人柱力なら…、
 その存在がどういう生き様を歩いてきたか、
 大体想像できんだろ!」

この口調から察するに、
雲隠れにおいても尾獣は忌み嫌われる存在であったようですが、
今はビーの中にいる八尾もかつて
雲隠れの人々を畏怖させるような暴れっぷりを見せたのでしょう。

「ああ。できるってばよ!
 だったらオレの事だって想像できるハズだろ!
 じゃあ何でオレが困ってんのに助けてくんねーんだ…!?
 オレだって………。」

と、人柱力の苦悩を知っているはずなのに、
ビーが自分に意地悪をしているように感じているナルト。
ナルトは熱くなりすぎて必死という感じで、
周りの状況を冷静に捉えられていない――そんな感じかもしれません。

「…ビーさんはお前の事をちゃんと見てる。
 何か訳があってそうしたんだ。
 お前…ビーさんとあいさつしたか?」

モトイはビーの苦悩を知っているのでしょう。
そしてナルトもどんな辛い経験をしたのかも察したようです。

「グーとグーを重ねるやつならやったけど…。」

ナルトはビーと挨拶を交わしている…
モトイはある場所にナルトを連れて行ってあげることを決意します。
ナルトの監視役であるヤマトも連れ立って、
訪れた場所――そこは真実の滝と呼ばれている場所です。
滝壺に置かれた台座。そこで眼を閉じて何やら瞑想すると、
滝の中から何者かが出てきます。

「どうして一楽でサインを書かなかった?」

その何者かは徐々にその姿を現していきます。
まるでナルトの内面を抉り出すように。

「あいつら…急に手の平返した様に
 お前になれなれしくしてきたもんなぁ…。
 うっとうしい奴らだったもんなぁ…」

これはナルトの憎しみが具現化した幻影でしょうか。